【越山若水】世界史を復習するようだが、7世紀に成立したイスラム帝国は、欧州とアジアの交易の障壁になっていた。そこに11世紀ごろ両者を仲介する商業集団が登場した▼その一派が地中海で活躍した「マグリブの商人」である。彼らは遠方で貿易を行うため現地に代理人を配置。また不正を防ぐ手段として独自のルールを定めた▼「一度でも不正を働いた代理人は、次からは誰も契約しない」。つまり不正による短期的な利益は許さず、きちんと働いて長期的な利益を得るよう促す取り決めだ▼これを「多者間の懲罰戦略」と呼ぶらしい。ただマグリブの商人はユダヤ人中心の縁故集団。だから成り立つルールである。いうなれば、日本でも江戸時代から伝わる制裁慣習「村八分」に似ている▼トランプ米大統領は核・ミサイル開発をやめようとしない北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定。資金調達に関わる北や中国の企業に制裁を加え、経済的に孤立させる意向だ▼これに反発してか、北は新型の弾道ミサイルを発射した。しかも今回は米全土が射程内に入る恐れもあり、米国では軍事力行使の強硬論も再燃しそう▼聞く耳を持たない北の暴走には、これまで対話優先を求めてきた中国も国連制裁に協調し始めた。米国や日本が主導するマグリブ型の懲罰戦略で解決できるのか、逆に対話の扉を閉ざさないのか、不安が消えない。
 

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