【論説】学校法人「森友学園」の国有地売却問題を巡り、財務省が衆院予算委員会で、近畿財務局の担当者と学園側が価格の事前協議などをしたことをうかがわせる二つの音声データの存在を認めた。中には財務局が値引き額を過大にするため、ごみの埋設量を増やすよう工事業者を誘導したとみられる内容も明らかになった。

 森友問題では、国がごみの撤去費用として8億円余り値引きした根拠が不十分で、ずさんとする会計検査院の検査結果が国会に報告されたばかり。国が値引きを誘導したとなれば看過できないし法令にも抵触しかねないはずだ。安倍晋三首相の昭恵夫人が名誉校長を務めていたことへの忖度(そんたく)があった可能性は否定できず、衆院に続く参院予算委での徹底解明を望みたい。

 財務省の太田充理財局長が存在を認めた昨年5月半ばごろとされる音声データでは、森友学園前理事長の籠池泰典被告らが「ゼロ円に極めて近い形で払い下げをしてほしい」と迫ったのに対して、財務局側が「ゼロに近い金額まで、できるだけ努力する作業をやっている」などと答えている。

 このデータに関して、菅義偉官房長官が24日の衆院内閣委員会で「一方的な報道だ」として、詳細な説明を避けた。加計問題で「総理のご意向」文書を「怪文書」と切り捨てた経緯と重なる。太田理財局長は「1億3千万円を下回る売却は考えられないという趣旨の話」としたが、野党から「価格交渉だ」と批判を浴びたのも当然だろう。

 さらに昨年の3月下旬から4月ごろとされる音声データでは、新たなごみが見つかったとの報告を受けた財務局の担当者が、新たなごみは多くないとする工事業者に対し、範囲を地下9メートルにまで広げごみが混在することにし、量を多く見積もるよう手法を指南したとも受け取れる発言をしていたとされる。

 太田理財局長は、期限が迫る中で「資料の提出をお願いした。口裏合わせとの指摘は当たらない」としたが、口裏どころではなく、明らかに国による値引き誘導だろう。売却前提の定期借地契約の締結や分割払いの容認といった措置は「12年度から16年度の間で本件のみ」と認めたように、森友学園の扱いは異例中の異例だ。

 15年10月には昭恵夫人付の職員が学園側の要請を受け、財務省幹部に取り次いだ経緯がある。しかもこの幹部は翌3月に籠池被告らと面談し、その際、被告側は昭恵氏の名前をちらつかせており、学園と首相夫人とのつながりは省を挙げて知るところになった可能性もある。

 首相は「私が答えているということで、ご了承いただきたい」と夫人の国会招致を否定している。だが、音声データなどが示す異例の扱いは夫人の関与があったからではないか。首相官邸に人事権を握られた省幹部の忖度が改めて問われている。首相が国民に約束した「丁寧な説明」には、夫人はもちろん関係者の国会招致は欠かせない。
 

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