【越山若水】カナダ生まれのグレッグ・ロービックさんは、戦後初めての外国人落語家だ。2008年に六代目桂文枝に弟子入りし、桂三輝(サンシャイン)の名前をもらった▼13年から世界各国で英語やフランス語の落語公演を続ける身になった。そのいまも後悔していることがある(「空気の読み方、教えてください」小学館新書)▼文枝師匠のもとで修業中にテレビ出演の話があった。「師匠の身の回りのことがおろそかになるから」と、断るよう兄弟子に助言された。でも、納得できずに出た▼有名になるはずが、何も起こらなかった。「修業の身である私がわがままを通し、周りに迷惑をかけただけでした」。悔いているのは、自分本位に考える西洋流を通したことだ▼ひたすら師匠のことだけを考えよという落語の修業は、空気を読んで演じる伝統芸には欠かせない。分かっていたつもりが「Me(私)!」と主張する西洋人のままだった、と▼モンゴル人の思考様式がどうなのかは知らないけれど、修業中の三輝さんに近いものを感じる。「横綱の品格」に得心してくれているのかどうか▼日馬富士の暴行問題は日を追って複雑になる。貴乃花親方の姿勢に批判的な目が向けられたと思ったら、白鵬の振る舞いにも苦言が呈された。何かがズレている。大相撲が急速に国際化するなかで、本質が置き去りにされていないか。

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