【越山若水】何とも物騒なネーミングである。「ゆでガエル理論」。理論とは言うけれど、科学的な根拠のない作り話。危機感の欠如や優柔不断を戒める教訓として使われる▼解説すれば、カエルを熱湯に入れると驚いて飛び出すが、徐々に熱くするとカエルは気づかずゆで上がって死んでしまう。環境変化への対応はそれほど難しい▼こんな理論が生まれたのも世間には「時既に遅し」と後悔したケースが多い証左だろう。特に政治やビジネスの世界では、トップの判断が悪い結果を招きかねない▼念のため、ここで科学的な事実を述べておく。熱湯にカエルを入れればすぐさま死に至り、水温を上げれば熱くなる前に逃げ出すという。理論の背景にはどうやらカエルののんきな印象があるようだ▼日本を代表する企業の不正が相次いでいる。神戸製鋼所のデータ改ざん、日産やスバルの無資格検査にも失望したが、今度は三菱マテリアル子会社のデータ書き換えである▼取引先や顧客のことより、自社の利益が第一という身勝手。中には不正の温床が過熱していたのも気づかず、指摘を受けてやっと気づいた企業もある▼まさに「ゆでガエル」を地で行くお粗末さだ。折しも20年前、山一証券は損失隠しの「簿外債務」で経営破綻した。問題の先送りが命取りになるのは明らか。運よく死を免れても、復活には荒療治が避けられない。

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