OBを含めて練習する少年ソフト「順化ドリームス」の児童。県都の中心にも限界集落化の波は来ている=9月、福井市の順化小グラウンド

 「お願いしまーす」の掛け声が、福井県庁のお堀端に響いた。9月中旬週末の福井市順化小グラウンド。少年ソフトボールチーム「順化ドリームス」の児童4人が、ノック練習に励んでいた。所属選手は、今年引退した6年生を除くとこれで全員。大会には近くの松本小児童5人を加えた混合チームで何とか出場している。

 50年余り前の順化小は、1千人超が通うマンモス校だった。今は129人。少年ソフトチームも、県大会で優勝する強豪だったころの面影はなくなった。今年入部したばかりで主将になった峯金正太郎君は「試合は勝てないけれど練習は楽しい。でも本当は順化だけで試合に出たい」。監督3年目の井花正伸さん(46)は「先行きは厳しい」と、申し訳なさそうに児童たちに目をやった。

 部員不足の順化ドリームスを辞め、隣の宝永地区の学童野球チームに移った児童もいる。県軟式野球連盟によると、近隣の小学校区同士による混合編成の学童野球チームは、登録全体の1割強を占めるようになったという。順化地区では「他地区のスポ少に通っている子は多い。チーム間で子どもの取り合いが起きている」と保護者から苦笑いが漏れるほど、小学生は貴重な存在になった。

   ■  ■  ■

 中心市街地が空洞化する、いわゆる「ドーナツ化現象」が叫ばれ始めたのは、バブル期のころ。そのさなかの1988年でさえ、順化地区には約5900人が暮らしていた。現在は約3600人で当時から4割減った。

 「官公庁があって昼間は働いている人が多いから、過疎化と言われると抵抗があるけれど…」。住民からはそんなつぶやきも聞かれるが、県全体、市全体と比べると人口減の速度は明らかに急激だ。

   ■  ■  ■

 ホテルと飲食店の家業を9年前に継いだ新海康介さん(41)。順化小時代には同学年が約60人いた。そのうち地元で家庭を築いたのは3人だけだという。1学年20人前後になった今の順化小に、次男と三男が通う。文部科学省の手引に従えば、統廃合などの検討対象に当てはまる規模だ。「順化小の合併論は30年前から言われているけれど、住民にとってはアイデンティティーを失うことに抵抗がある」。だが、子どもが競争心や協調性を養うなどするのに、今の環境が十分なのかは気がかりだ。

 順化地区の高齢化率は36・22%(10月1日現在)で、市内48地区で10番目に高い。公民館主事は「次の世代を担っていく人がどんどん減っている」と不安を口にする。高齢化率は周辺の各地区でも、宝永37・24%、旭34・59%、春山31・75%と、市平均28・08%を超えている。

 過疎地域だけでなく、県都の中心部にも表れ始めた限界集落化の兆し。65歳以上の住民が半数以上を占める限界集落は、県内190カ所(4月1日現在)。うち35カ所は、市街地を含む都市計画区域内に点在している

 ×  ×  ×

 人口減少が進む中、暮らしに身近な地域の機能低下が目立ち始めている。県内の現状を見つめ、持続可能な地域の形を探る。

関連記事
あわせて読みたい