【越山若水】この時期には、雪と見まがうものが空を舞う。一般的な呼び名は「綿虫(わたむし)」。福井の俳句愛好家も心ひかれる冬の季語らしく、本紙の「福井俳壇」にもよく飛来する▼白い綿きれのようだと付いた名前もいいが、北海道に流布する名が可憐(かれん)で美しい。「雪虫(ゆきむし)」という。これが群れ飛ぶと日をおかず、本当の雪が後を追うらしい▼ものの哀れを誘うとは、この歌のことだろうか。2008年の歌会始の儀で永田和宏さんは詠んだ。「火の匂ひかすかただよふ夕暮れを浮力まとひて雪虫は飛ぶ」▼何のことやら、と思う人も実は目撃しているかもしれない。正体は、体長2ミリほどのアブラムシ科の昆虫である。綿をまとったような姿をし、羽がか弱いので風に吹かれて漂う▼たぶん同じころ、白く光りながら飛ぶ糸もある。暖かい日に何本も見たことがある。調べてみると、蜘蛛(くも)だった。子蜘蛛は糸に包まれ、成虫も長い糸にぶら下がって飛ぶようだ▼この現象を「バルーニング」という。風船や気球のように、行き先は風まかせ。いずれどこかに落ち着けば良し。そこを住(す)み処(か)とするわけである▼風が悪ければ、あるいは運がなければ…。綿虫といい蜘蛛といい、あてどない旅路の危険を思うと、ずいぶん大胆な戦略ではないか。きのうは二十四節気の「小雪」。こちらは小心な人間の身だから、計画的な冬支度を急ぐとしよう。

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