中森明菜『明菜』

 デビュー35周年のオリジナル。同時発売のディスコ・カバー『Cage』は、派手なサウンドに対する様々な歌い方が楽しいが、『明菜』の方はどの楽曲も深い。

 全9曲中、1曲目の『メリークリスマス』と8曲目『fate』は同じ旋律で、離れて暮らす愛しい人への想いを、異なる立場からつづったバラード。二人の心が今も繋がっていることで、間の6曲の恋模様がよりドラマティックに映る。

 『Amar es creer』や『雨音』『La.La.Bye』といったフラメンコやタンゴなどを基調とした情熱系の楽曲では、緩急をつけた歌唱がさらに進化しており、恋に堕ちる場面やその戸惑いが鮮明に浮かぶ。

 特に『ひらり』の本作版は絶品。元々の流麗なダンスポップスに、和楽器風の演奏を加えることで、散りゆく桜が作り出す小宇宙の中、激しい情熱を秘めた和装の女性が舞う姿が思い浮かぶ。音楽だけで、様々な映像を想起させる熟練の歌声に恐れ入った。

 本作を聴きこめば、一つの側面から全体像を想像する豊かな発想が身につくはず。

(ユニバーサル・3000円+税)=臼井孝

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