【論説】トランプ米政権が北朝鮮を「テロ支援国家」に再指定した。既に国連決議や米国独自の制裁などほぼ手は尽くされており、再指定の実質的な効果は限定的とされる。それでも北朝鮮が反発を強めることは必至だろう。核・ミサイル開発は2カ月余り鳴りを潜めているが、再び挑発行為に及ぶ懸念がある。

 中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席が派遣した特使が手ぶらで帰国したことを見極めての再指定とみられるが、トランプ政権に焦りがあるのではないか。内政で一向に成果が得られず、外交で点数稼ぎをしたい節がある。

 北朝鮮は「草の根を食べても(核・ミサイル開発は)やめない」(ロシアのプーチン大統領)の言葉通り、長期戦も覚悟しなければならない。短期間に成果を上げたいというトランプ氏の思惑が強硬姿勢につながる可能性も否定できない。日米韓、中ロのさらなる連携と共に対話による出口戦略を確認すべきだ。

 ブッシュ(子)政権で2008年に解除されて以来9年ぶりの再指定で、トランプ氏は「北朝鮮は核で世界を威嚇しているだけでなく、外国での暗殺など国際テロを繰り返し支援してきた」とし「何年も前に行われるべきだった」と述べた。

 今年2月にマレーシアで金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄金正男(ジョンナム)氏が化学兵器で殺害されたことなどを重視したという。さらには北朝鮮に拘束された米国人大学生が意識不明の状態に陥り、解放後に死亡したことも背景にあるとされる。

 対話路線への糸口として期待された中国の特使派遣では、中朝いずれからも成果発表はない。中国共産党大会後の党幹部訪朝では、北朝鮮トップとの会談が慣例で、これを破ったのであれば、習氏のメンツがつぶされた形であり、中朝の関係悪化は避けられない。

 ただ、ティラーソン米国務長官は、米中首脳会談後、北朝鮮を交渉のテーブルに着かせるために、圧力路線の米国と対話重視の中国が「互いに補完し合うことで合意した」と説明している。米国は中国に制裁強化と並行して一層の対話を働き掛けるよう求めるべきだ。

 トランプ氏はアジア歴訪の際、韓国国会の演説で「われわれを甘く見るな」「カルトに支配された国」「監獄国家」などと警告を発した。一方で「待てば待つほど危険が増し、選択肢が限られてくる」と焦燥感もにじませた。ツイッターには金氏について「私は友人になるよう努める」と掲載するなど、相変わらずの駆け引きぶりだが、長期化した場合、予測不能の行動に出る可能性はないのか。

 安倍晋三首相は再指定を「歓迎し支持する」と述べたが、傍観者的な姿勢では解決につながらない。拉致問題解決を「使命」とするが、圧力強化で拉致被害者への影響も否定できない。横田めぐみさんの母早紀江さんが娘の帰国について「希望を持ち続けている。できれば平和にやってもらいたいが…」と発した言葉を重く受け止めるべきだ。
 

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