自宅で手紙を書く菅原はないさん=11月7日、福井県越前町

 23日は「ふみの日」。今年100歳を迎えた福井県越前町の菅原はないさんは、同じ年の兵庫県の女性と約80年にわたり文通している。3、4カ月に1回、近況を知らせ合う手紙はすべて手書きで、生きがいの一つになっている。「命続く限り、文通を続けていきたい」と机に向かっている。

 菅原さんは1917年、同町で生まれた。萩野尋常小学校を卒業後、13歳で親元を離れ、製糸から織物まで手掛ける兵庫県内の繊維会社に集団就職した。女性ばかりの工場で、糸を紡ぐ仕事に取り組んだという。「皆いい人ばかりで楽しかった」と振り返る。

 文通相手は同県養父市に住む西村鶴江さん。会社の寮が同室で、約8年間を共に過ごした。結婚を機に21歳で帰福。同時期に西村さんも結婚して会社を去り、すぐに文通が始まった。子どもが生まれた時など、報告したいことがあれば手紙を書いて送り合ってきた。

 「西村さんは真面目な人で、一緒に勉強や仕事に取り組んだのが思い出」と菅原さん。移動に長時間かかる遠方のため一度も会うことができないまま80年が過ぎてしまったが、文通を重ねたことで現在も「心が通じ合っている感じがする」と話す。

 最近は安倍晋三首相からの100歳の祝い状を受け取ったことを伝え合った。西村さんからの手紙には祝い状を持った写真が同封され、会社時代の思い出話やレコードで古い歌を聴いて楽しんでいることがつづられている。末尾には「お元気でね、また会いましょう」。互いに毎回刻むお決まりの文言だという。

 菅原さんの長男、繁信さん(71)は「手紙の方が、メールなどよりも心が届く感じがする。長生きの秘訣なのかな」と手紙を書く母に優しいまなざしを向ける。

 菅原さんは「書くのは嫌いじゃない」と、日課として小学校卒業以来ずっと日記も書き続けているという。「書いておくと思い出せる。それが楽しい」と笑顔を浮かべる。

 旧郵政省は1979年、手紙の楽しさや文字文化を継承しようと毎月23日を「ふみの日」と定めた。11月23日については語呂合わせで「いいふみの日」とも呼ばれている。

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