【論説】加計学園の獣医学部新設を巡り、林芳正文部科学相が計画を認可した。大学設置・学校法人審議会(設置審)の9日付答申に沿うもので、手続き上は問題はないとしている。

 だが、安倍晋三首相の友人が理事長を務める学園が今年1月に、国家戦略特区諮問会議で特区の事業者に選定されるまで、首相の側近や内閣府が文科省に圧力をかけたとされるなど、多くの疑念が今もくすぶる。

 さらには「一点の曇りもない」とする政府説明に8割近い国民が納得できないとしたままだ。衆院文科委員会などで議論もされないままの認可は拙速と言わざるを得ない。

 林氏は「特区のプロセスの中で認められた学園の構想に沿っていることも確認した」と述べたが、設置審は今年5月の段階で、獣医師の需要動向や実習計画、教員らの配置計画などに不備があるとして多数の是正意見を付し、抜本的に改善しなければ新設を認めないとする「警告」まで出した経緯がある。学園がその都度、資料やデータを示すなど修正を重ね最終的に設置審がゴーサインを出した。

 政府は2015年6月に閣議決定した「日本再興戦略」で獣医学部新設に際しては▽既存の獣医師養成でない構想が具体化▽ライフサイエンスなどの獣医師が新たに対応すべき具体的需要▽既存の大学では対応が困難▽獣医師の需要動向―の4条件を満たすことが必要と決めた。

 特区諮問会議が認定した学園側の計画や資料に対し、設置審が「ノー」を突き付けたことになる。諮問会議の議事要旨などからは、条件を満たすか否か、議論した跡はほとんど見えない。設置審での是正を求めるやりとりからは、諮問会議による業者選定は疑問だらけというほかない。

 計画を巡って「総理のご意向」などと記された文書が見つかり、野党は「加計ありき」の業者選定だった疑念があるとして追及してきた。首相や側近らは一切の関与を否定している。

 だが、首相が加計学園の計画を知ったのは今年1月20日に諮問会議が認定した際と答弁するなど、理事長と年に何回も会食やゴルフをする間柄からは不自然極まりない。昨年の後半には理事長自ら所管大臣と面会。2年前には特区愛媛県今治市の幹部職員が官邸を訪問しているではないか。

 認可で来年4月の開学が正式決定し、52年ぶりに獣医学部が新設される。設置審は留意事項として定員の厳格な管理、実習での実技経験の質的・量的充実、専任教員の適切な運用などを求めた。いいかげんな運営でしわ寄せを被るのは学生であり、しっかりチェックを続けるべきだ。

 そもそも今回の電撃的な衆院解散・選挙が「加計追及逃れ」ではなかったか。国会は衆院文科委を15日に開くことで与野党が合意した。自民党の質問時間見直し要求は、徹底追及を掲げる野党への嫌がらせ、ごり押しとも受け取られる。あからさまな「加計隠し」の姿勢は看過できない。

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