【越山若水】何を忘れても財布さえあれば大丈夫、と思うのは時代遅れのようだ。中国はいまや、現金不要の「超キャッシュレス社会」。スマートフォンで何でも支払い可能だ▼そんな記事が福井新聞ホームページにあった。ごく簡単にいえば客と販売業者の間に仲介する業者がいて、スマホを通じ注文と支払いを代行する仕組みである▼飲食店の予約にも活用される。あらかじめ料理を注文し、支払いも済ませておく。海外旅行の飲食ならなお安心で、メニューが読めなくて四苦八苦することもない▼このスマホ決済が一気に広まったのは中国が不信社会だから、という分析が面白い。金を払わない、品物を渡さないなど他人を信じないために起きるもめ事が、これなら少ない▼さもありなん、である。でも、キャッシュレス化が進む理由はそれだけか。通貨当局や為政者にも、おいしい話ではなかろうか。例えば偽札が無意味になり、金融秩序が守れる▼ドイツで恥ずかしい事件があった。「逆襲される文明」(塩野七生著、文春新書)によると数年前のことで、数万ユーロ分の300ユーロ紙幣がさばけた▼偽札も何も300ユーロ紙幣は初めからないので、だまされたドイツの面目は丸つぶれ。国内では報道されなかったらしい。スマホ決済だとこんな事件は起きない。その代わり、中国ではスマホ決済ならではの詐欺が多発しているという。

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