【論説】これだけ杜撰(ずさん)な計画が、なぜ特区認定を受けることができたのか。「加計ありき」の疑念が改めて深まったと言わざるを得ない。

 安倍晋三首相の「腹心の友」が理事長を務める学校法人「加計学園」が、国家戦略特区制度を活用して愛媛県今治市に岡山理科大獣医学部を新設する計画を巡り、文部科学省の大学設置・学校法人審議会(設置審)が林芳正文科相に「可」とする答申をした。近く認可される見通しだ。

 設置審は審査段階の是正意見や学園の回答内容の公表に踏み切った。かねて閉鎖性を指摘する声があり、世論調査で国民の8割が政府の説明に「納得できない」としていることを考慮すれば、公表は当然だろう。

 公表された5月の第1次是正意見ではライフサイエンスや公務員獣医師といった分野で「獣医師の社会的な人材需要の動向が不明」を指摘。これは特区の4条件に重なり、特区諮問会議が「不明」のまま計画を認定していたことになる。

 特区諮問会議の議事要旨などからは、計画が条件をクリアするかを詳細に議論した形跡はうかがえない。さらには「最終的に私が確認した」と国会答弁した山本幸三前地方創生担当相は「具体的な需要を完璧に描ける人はいない」などと持論を展開するばかりで、まともな答弁をしなかった。

 設置審は、定員や実習計画、教員の高齢層への偏りなども指摘。実習助手に至っては「全くいないこと」が指摘されるなど、当初計画が体をなしていなかったことが明らかになった。

 設置審は再三にわたって是正を求め、答申に至った。学園側の修正は、定員を160人から140人に減らしたり、実習こま数や日数を変更したりするなど、対応は場当たり的とも映る。52年ぶりの新設に沿う設置審の審査だったかも検証する必要がある。

 これで来年4月の開学が迎えられるのか、懸念は尽きないが、答申では留意事項として、定員の厳格な管理や実習の質的、量的拡充を求めており、学園側がきちんと改善したか、チェックが欠かせない。

 答申は来週にも衆院文科委員会で審議される予定だが、「総理のご意向」が指摘される中で、自民党は首相の出席には否定的という。首相は「国会で質問されれば丁寧にこたえていく」と言っていたのに、これでは不誠実の極みだろう。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡っても、会計検査院が値引き額は最大約6億円過大だったと試算するなど、疑問は増している。森友、加計問題で行政の公平公正が大きく揺らいでいる。なし崩しの決着は断じて許されない。

 特別国会では予算委員会も予定される。徹底解明を望みたいが、自民党が質問時間を与野党「5対5」へ改めるよう提案したのは、「森友、加計隠し」にほかならない。旧民主党政権時に野党だった自民が「2対8」を要求し実現させたことをほおかむりしたかのような姿勢であり、「1強」のおごりそのものだ。

関連記事
あわせて読みたい