【越山若水】海で見かけるヤドカリは、貝殻を背負って生きる変わった甲殻類である。自分の体格に釣り合った巻き貝を見つけてすみ着き、成長に伴い大きな貝へと引っ越す▼では自分に合う貝殻を、ヤドカリはどのように見つけるのか。それを確かめるユニークな実験を、公立鳥取環境大の小林朋道教授が行い、自著で紹介している▼水槽に大小3種類の貝殻を用意し、裸にしたヤドカリを入れる。間にアクリル板を置き接触できなくしたが、今まで入っていた大きさの貝殻の前に長くとどまった▼つまり見るだけで自分に最適の貝を認知できるようだ。次に同じ大きさでも重り付きと発泡スチロール付き、重量の違う貝殻を置く。するとジックリと調べた後、ほとんどが軽い貝殻を選んだという▼どうやらヤドカリは最低限の労力で天敵から身を守り、餌探しなどの活動がやりやすいよう、大きすぎずかつ重すぎない貝を選んでいる。要するに「分相応」を心得ている▼人間ならどうだろう。例えば住環境ならば、豪華すぎても居心地が悪い。ヤドカリと同じく身の丈に合った生き方こそ、ストレスが少なく落ち着ける▼「夢や目標はでっかい方がいい」。大人は子どもたちに激励のつもりでそう言ってしまう。しかし当人には荷が重すぎて心の負担にもなる。分相応の器で過ごし、成長したら引っ越せばいい。ヤドカリのように…。

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