【論説】臓器移植法が施行されて20年になる。県内でも県臓器移植推進財団による街頭キャンペーンが毎年実施されているが、必ずしも理解が進んでおらず、病院の体制も不十分だ。臓器の移植は「命のリレー」である。社会全体で支えるために国民理解を深めたい。

 従来は臓器提供に本人の生前の意思が必要で、意思表示カードが配布された。2010年の法改正により本人の意思が不明でも家族の承諾で脳死臓器提供が可能に。また15歳未満の提供もできるようになった。

 臓器を提供したいか、したくないか、提供したくない臓器は何か。運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードの裏にも記載欄があり、万一の際の意思表示に役立つ。身近な問題として再認識したい。

 これまでに脳死下の臓器提供は500件近く、移植は2千件を超えている。県内でも脳死判定に基づく臓器提供ができるのは4病院あり、実例は6件ある。全国で確実に実績を積んできており、日本の移植手術の成績は海外に比べても極めて良好とされる。

 だが、年間の提供数は心停止後を含めても100件前後。米国のわずか1%程度だ。一方で日本臓器移植ネットワーク(JOT)に登録し、移植を待っている希望者は約1万4千人に上り、県内にも60人いる。

 伸び悩みの原因は何か。まず、脳死での臓器提供ができるのは高度な医療を行える▽大学附属病院▽日本救急医学会の指導医指定施設▽日本脳神経外科学会の基幹施設または研修施設▽救命救急センターとして認定された施設▽日本小児総合医療施設協議会の会員施設―の5類型に限られる。

 厚生労働省によると、該当するのは国内に896施設(3月現在)あるが、その半数で提供体制が未整備。手続きも複雑で手順を定めたマニュアルがない、脳死者の家族に対し精神面を含め支援するだけの人手がないといった理由だ。

 提供者が18歳未満の場合は、虐待を受けていないことを確かめる必要がある。これに対応できるのは全体の3割にすぎない。このため海外で移植を受けざるを得ない「渡航移植」も子どもが中心とされる。

 また、移植担当以外の医師が提供に無関心であったり、脳死判定に携わると脳神経外科医は日常診療ができなくなるなどの事情も抱えている。厚労省は関連学会と共に体制整備に向けた教科書作りなどに取り組んでいるが、厳しい「現場の壁」をどう改善していくか難問が立ちはだかる。

 もう一つの問題は自身や家族にも提供に対する戸惑いや抵抗感があることだ。JOTの意識調査によると既に臓器提供を意思表示しているのは13・6%、「意思表示してみたい」は27・0%にとどまる。

 かけがえのない命を守りつないでいくことの大切さを、日ごろ家族や仲間で話し合いたい。専門家は臓器を提供したドナー家族を精神的に支える組織づくりを訴えており、国の支援体制を充実すべきである。

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