三浦展さん

 愛されるまちとは、どんなものか。再開発事業では、すべてが便利で機能的な同じ姿になってしまい、誰がこのまちを好きなのかが見えなくなる。店を開いている人の個性、その店が好きな人の個性が消えて、平均化されていく。

 今のまちは、機能重視の工業製品のよう。日本の優良企業は安くて性能が良い物を作るのが得意だが、必ず美的ではなくなる。色気がない。最大公約数、平均値でマーケティングしていくとそうなる。ビルやマンションも同じ。断熱性、耐震性は必要だが、同じ条件をクリアするように造るから、みんな似てしまう。そこが不満になる。だから、昔のレトロなマンションや昭和の喫茶店が好かれるようになった。

 生活がどんどん便利になって、あえて面倒なことを取り入れたくなる人も増えている。私が最近取材した人でも、郊外の山の上の廃屋を買って自分でリノベーションする女性がいたり、地方に移住してイノシシを自分で狩猟して、さばいて食べて暮らす女性がいたり。生活が便利になる一方で、手間も愛情もかけられるもの、リアルなものを人は求め始めている。

 まちも、楽しい場所、愛情を持てる場所は合理性だけではできない。「まちの幸福」を考えたとき、仕事の後に酒を飲んでじわっと幸せを感じるという場所があるべき。その場所は、汚い焼き鳥屋だったり、ホルモン屋だったりする。仕事で疲れたときは、そういう店のほうが癒やされる。女性もおしゃれな店よりそういう店が好きだという人が増えている。東京・大手町に今年できたオフィスビルの地下に、横丁がコンセプトの飲食店街がある。できたばかりなのに、横丁らしさがうまく出ている。

 再開発事業はそもそも、家賃を高くして税収を増やすためにやっている。だが、そうなると全国チェーン店しか入れなくて日本中が均質化する。むしろ安い家賃にして、安いから入れる店を呼び込むのではなく、いい店を安い家賃で入れるべきだ。イニシャル(初期費用)を安くして、軌道に乗ってきたら賃料を上げるのでも良い。

 米ニューヨーク・マンハッタンは、どんなにビルが建っていても面白いまま。古いレコード屋や本屋や飲食店があって、歩くのが楽しい。日本人はやることが真面目だからきれいにしすぎて、“抜け感”がつくれない。この辺はぼろくてもいいやという感覚。再開発が起きても、核となる小さな古い店をみんなで共有して、それをなくさないように計画しないといけない。

 ■新しい時代を予測する社会デザイン研究家 三浦展さん

 1958年、新潟県生まれ。商業施設運営のパルコで雑誌編集長を務めた後、三菱総合研究所主任研究員を経て、マーケティング会社「カルチャースタディーズ研究所」を設立。「下流社会」「ファスト風土化する日本」など著書多数。

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 福井を訪れる、さまざまな分野で活躍する著名人や識者にインタビューし、福井へのメッセージや専門的な立場からのアドバイスを聞く。

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