【論説】欧州などで頻発していた車両による突入テロが米ニューヨークでも起き、8人が死亡、12人が負傷した。ハロウィーン当日であり、場所が2001年の米中枢同時テロで崩壊した世界貿易センタービル跡地の近くだけに、米国民ならずともショッキングな事件だ。

 容疑者は、イスラム国(IS)との接点は不明だが、過激思想に感化されていたとみられる。特定の民族や宗教の排斥が憎悪を生み、そこにISの過激思想が入り込むことで、どこにでもいる若者が事件の首謀者となる可能性がある。

 いわゆる「ローンウルフ(一匹おおかみ)」型のテロとされるケースで、仲間や組織の指示や支援がなく、いつどこでも可能であり、防止策も困難を極める。とはいえ、日本は3年後に東京五輪・パラリンピックを控え、欧州に学ぶなど対策強化を図るべきだ。

 IS自体は、シリア北部のラッカや、イラク北部のモスルといった拠点や支配地域を急速に失い、壊滅状態にある。加わっていた外国人戦闘員のうち、数千人が出身国に戻ったという。欧州を中心にIS戦闘員が出身国で起こすテロが繰り返されているのが現状だ。

 さらに、警戒しなければならないのが、今回の事件のように、組織には加わっていなくても、思想に共鳴した若者によるテロが多発していることだ。

 NYテロの容疑者は、携帯電話にISに関する大量の動画や画像を保存。車両からは、ISを支持する内容が書かれたメモが見つかり、犯行の際「アラー・アクバル(神は偉大なり)」とアラビア語で叫んでいたとの目撃情報もある。ウズベキスタン出身で、移民に抽選で与えられる米国永住権(グリーンカード)も得ていたという。

 トランプ米大統領は事件を受け、グリーンカード制度を撤廃する考えを示した。トランプ氏は特定国からの入国を禁止する大統領令に署名するなど、イスラム教徒の規制に躍起だが、今回、入国規制の実効性が問われる結果にもなった。

 ただ、こうした規制、排斥が憎悪を生む要因になっているともいえる。欧州ではテロ事件後、イスラム教徒に対する嫌がらせや、暴言を浴びせるといった事例が相次いだ。それに対する憎悪が新たなテロの背景にもなる。憎悪が憎悪を呼ぶ負の連鎖を断ち切らない限り、テロはなくならないことを肝に銘じるべきだ。

 ISに関する動きはアジアにも及んでいる。フィリピン南部のミンダナオ島では今年5月以降、イスラム過激派と政府軍の戦闘で、死者は市民を含め千人を超えた。米軍幹部は「帰国した戦闘員が東南アジアに新たな拠点をつくろうとしている」との見方を示した。

 アジアの拠点は、過激思想の一層の流布にもつながる。通常国会の組織犯罪処罰法(共謀罪)改正案審議で政府はローンウルフ型は「対象にならない」とした。無策はもってのほかだ。少なくとも過激思想の根絶に向けた国際社会の結束に率先して尽くすべきだ。

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