【越山若水】熊本城を訪ねたとき大天守は工事用シートに覆われていた。といっても特製で、細かい網目になっているから内側が透けて見える。市民や観光客への心遣いである▼熊本県人は武骨で頑固。人呼んで「肥後もっこす」。でもそれは一面的な見方で、本来こまやかに気配りができるという。シートの一事が万事―なるほど、だ▼最大震度7を観測した地震から1年半余りがたった。関連死を含め、熊本県内の犠牲者は246人に及ぶ。約4万5千の人がなお、仮住まいを続けているともいう▼熊本城も手ひどく傷付いていた。櫓(やぐら)など国の重要文化財13棟が倒壊、破損した。切り立った「武者返し」で知られる石垣も、973面のうち517面が崩れたり膨らんだり…▼修復工事はもちろん、たやすいはずがない。傾いた建造物は傾いた姿のまま、無数の石が崩れ出た石垣はえぐり出された内臓をさらすようにしながら、いまもじっと着工を待つ▼夜、市内の老舗百貨店に近い通りで、多くの若者集団とすれ違った。女性の1人が口から血を流していると見えたのは赤いペイントだった。ハロウィーンだと気付いた▼もっこすとは別に、熊本の県民性を表す言葉がもう一つあるそうだ。新しいものが好きな人、の意味で「わさもん」。いまは、こちらが主流らしい。新しい何かへ向かって前へ、前へ。いいじゃないか! 熊本。

関連記事
あわせて読みたい