【論説】途上国を含む各国が温室効果ガスの削減に取り組むことを約束した「パリ協定」が発効して1年がたった。6日からはドイツのボンで国連気候変動会議(COP23)が開かれ、パリ協定の「ルールブック」策定に向けた交渉が始まる。

 多国間条約では異例の速さで発効した歴史的な協定である。地球温暖化への世界の危機感がどれほど強いかの表れだった。COP23では、海面上昇の影響を受ける南太平洋の島国フィジーが初めて議長国となる。難交渉となっても、これ以上は温暖化を進めない決意の象徴でもあるだろう。

 ■対立乗り越え■

 パリ協定は2015年12月、パリで開かれたCOP21で採択された。世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度、できれば1・5度までに抑えることを目指す内容だ。

 先進国と途上国とを問わず、全ての国が温暖化ガス削減の自主目標を作成して国連に提出し、国内対策を実施する義務を負う。16年11月4日に発効し、ことし10月25日現在で169カ国が批准している。

 ルールは1997年採択の京都議定書よりはるかに複雑で、条約事務局が提示しているだけでも60項目を超えるという。これらを、各国が交渉しながら一つ一つ文書化する作業がCOP23に求められている。期限は18年のCOP24までで、きつい日程の作業を強いられる。

 一番の課題は、大量の温室効果ガスを排出してきた先進国側と、その責任を指摘する途上国側の対立をどう解消するか。問題が複雑なのは、途上国としての中国が排出量1位で、その削減量が温暖化を防ぐ大きなカギを握るためだ。対立は深刻だが、乗り越えなければ展望は開けない。

 ■離脱と順守■

 中国とともに協定採択を主導した米国の対応も焦点だ。

 トランプ大統領は、オバマ政権下で批准した協定からの離脱を言明した文書を8月に提出している。実際に離脱が可能になるのは、規定によって最短でも20年11月以降。そこでCOP23にも代表団を送り込む。

 米紙の報道によるとトランプ政権は、石炭や天然ガスなど化石燃料を燃やした際の二酸化炭素(CO2)排出を抑え、エネルギー効率も高めることによって温暖化対策に取り組む方針をCOP23で表明する。

 この方針にはすでに米国内でも批判が出ている。化石燃料を使うことには変わりがないためで、脱炭素化の方向性を打ち出したパリ協定とは根本的に相いれない。各国からも疑問の声が上がるのは必至だ。

 とはいえ米国民の7割は協定を支持し、2300を超える企業や都市などが協定を守る連合に参加している。トランプ政権も決して無視できず、方針変更の余地は残っている。

 ■失地回復の機会■

 残念ながら、日本の対応は鈍い。協定批准が間に合わずに、昨年の締約国会議では議決権のないオブザーバー参加となった。温暖化に対する危機感の乏しさを安倍晋三政権は厳しく反省すべきである。

 欧州やアジアの専門家が7月にまとめた報告書によれば、日本の2014年の温室効果ガス排出量は1人当たり10・5トン。世界の排出量の80%を占める20カ国・地域の平均8・3トンを上回る。

 この結果、温暖化対策は5段階評価の最低ランクだ。世界は冷めた目で日本を見ているといえる。COP23を失地回復の機会にしなければならない。

 温暖化による気候の変化は、日ごろ誰もが肌で感じている。先ごろ2週続けて来襲した台風を取っても、強い勢力と雨量の多さに驚かされた。それは温暖化と無関係ではないはずだ。われわれもまたパリ協定とCOP23の行方を傍観しているわけにはいかない。

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