【越山若水】今の日本は人口減少が進み、もはや大きな経済成長は望めない。かつての上昇期は終わり低迷期にある。こうした現状を「下山の時代」と表現した人たちがいる▼その要諦は、停滞する日本にふさわしい思考が必要だという警告である。ノンフィクション作家の神山典士(こうやまのりお)さんも同じ考えで、時代に即した価値観を提言する▼自らの本「成功する里山ビジネス」(角川新書)に「下山の時代の町おこし」という項目がある。そこで福岡県津屋崎にある地域づくり団体の代表を紹介している▼部員が100人いる野球部と9人の部とでは何が違うのか? 東京の建設会社から移住したその男性はそんな質問を投げかける。その上で「僕は9人のチームのような町づくりを実践したい」と言う▼人数の多少はもちろん、人口増加と減少の時代を例えている。100人の部では選手は一つのポジションに特化して技術を磨き、他者を蹴落とすための激しい競争が起きる▼9人のチームは一人抜けても試合ができない。全員がどこのポジションもこなし、互いにカバーし合う協力が大切。コミュニケーションも欠かせない▼町おこしの基本は「みみずの視点」だという。派手なイベントでにぎわいを演出するのでなく、地域の土壌を豊かにし地中に養分を与え花を咲かせる。地域創生は競争から協働へ、「9人の全員野球」を旨としたい。
 

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