【論説】第4次安倍内閣が発足。長期政権を視野に入れる安倍晋三首相の狙いは、経済成長による民の生活安定を図りながら、憲法改正を実現することであろう。衆院選で自民党が大勝した上に改憲勢力が圧倒的多数を占めた。首相の悲願中の悲願ともいえる憲法9条を軸に改正論議が加速する様相だ。国民は安倍戦略の本質を冷静に判断したい。

 内閣発足後の記者会見で首相は「憲法審査会に各党が改正案を持ち寄って、建設的な議論をしていくことが大切だ」と述べ「与野党にかかわらず幅広い合意を形成するよう努力を重ね、国民的な理解を得られるようにしていきたい」と滑らかな調子で強調した。

 しかし、衆院選ではどうだったか。首相は期間中、石橋をたたいて渡る選挙戦術を展開。演説では憲法問題にはほとんど触れず、無党派層の懸念を呼ぶ発言を封印したのだ。

 自民党は政権公約で初めて改憲を掲げ、9条での自衛隊明記、教育無償化、緊急事態条項新設、参院選の「合区」解消の4項目を列記した。だが、それも公約集の最後で触れただけだった。選挙で憲法問題を奥にしまい込み、勝てば堂々「公約に対する国民の信任を得た」と改憲にひた走る戦略だったといえる。

 首相は「スケジュールありきではない」と繰り返すが、自民党は月内に改正案策定の議論を再開させ、来年1月召集の通常国会提示を目指す。2019年の参院選前の改憲発議を狙い党内布陣も固めた。

 そのことに関し「私は議論する考えはない」とコメントを避けた。しかし、今年5月「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と唐突に表明したのはいったい誰なのか。9条に自衛隊の存在を明記する「加憲」にまで踏み込んでおきながら「議論する考えはない」と言うのは底の浅い「二枚舌」であろう。

 世論調査で安倍政権下での改憲に「反対」との回答が過半数を占めるのも根拠があるということだ。

 改憲の国会発議には衆参各院で「総議員の3分の2以上」の賛成が必要。衆院選で自民、公明両党、希望の党、日本維新の会の改憲勢力が3分の2を大きく超え、約8割を占める。

 改憲そのものが目的化しているような首相だが、各党の足並みはそろっていない。自民党自体がまとまっておらず、9条に関しては「自衛隊の明記」と記したのみ。公明党は9条改正に積極的ではない。希望も公約では9条に関し「改正論議を進める」としたが、選挙で慎重論を訴えて当選した議員さえいる。

 国会論議を左右するのは野党第1党となった立憲民主党である。枝野幸男代表は改憲を否定しないが、人権尊重などの基本理念を重視。首相の解散権の制約や国民の知る権利の明記を掲げている。

 改憲は最終的に主権者たる国民の投票に委ねられる。なぜ改憲か、どこが不都合なのか。議論を尽くしても尽くせない。それほど日本国憲法には重みがある。
 

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