【論説】国際社会の目は厳しい。国連総会第1委員会(軍縮)は、日本主導で提案した核兵器廃絶決議を賛成144、反対4、棄権27で採択した。唯一の戦争被爆国として1994年から24年連続で提案しているが、賛成は昨年から23カ国減り、棄権は10カ国増えた。最大の理由は、7月に採択された画期的な「核兵器禁止条約」に直接触れず、非人道性に関する表現も弱めたからである。

 核軍縮の機運を高めるどころか、核禁止条約に参加しない後ろ向きの姿勢は国際社会の失望と反感を招くはめになった。日本の立ち位置が厳しく問われる。

 日本の核廃絶決議はこれまで賛成国が漸増傾向にあった。それは被爆国としての訴えに重みと説得力があったからこそである。

 しかし、今回は内容が明らかに後退。昨年まで「核兵器のあらゆる使用が壊滅的な人道上の結末をもたらす」と明記してきたが、「あらゆる」を削り、核拡散防止条約(NPT)で核軍縮の取り組みを明示した「第6条」への言及も削除してしまった。

 核禁止条約についても、決議前文に「核兵器のない世界の実現に向けたさまざまなアプローチに留意」という文言を入れたが、直接的な言及は見送った。米国の「核の傘」に依存する日本だ。核戦力増強を明言するトランプ米大統領に配慮したのだろう。条約推進国を中心に批判や異論が噴出したのも当然である。

 日本の核軍縮外交の柱である包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効促進に関し、当初案では北朝鮮だけを狙い撃ちにしていた。しかし「内容の後退だ」との反発を受けて修正、北朝鮮とは別の箇所に米中など8カ国全体に署名、批准を促す文言を入れた。

 これまで被爆者たちが国連の場で必死に核廃絶を訴えてきたにもかかわらず、日本政府は先導的な橋渡し役を果たそうとしない。条約推進国のブラジル代表は「条約制定は核軍縮と核不拡散にとって大きな成果。決議に言及しないのは考えられない」と非難した。

 高見沢将林軍縮大使が「謙虚に受け止めたい」と述べたのは日本に対する冷ややかな雰囲気を肌で感じたからであろう。

 問題は「核兵器のあらゆる使用」の「あらゆる」を削除したことである。「一部の核使用」であれば「非人道的な結果を招かない」との限定容認にすり替わるからだ。被爆国の訴えが骨抜きになり「核抑止力」の正当性が増すことになる。

 自民党の石破茂元幹事長は抑止力向上のため、国内への米軍核兵器配備の是非を議論すべきとの考えを提示した。安全保障体制への不安感は与党内に漂い「相手が常軌を逸した北朝鮮であることを踏まえれば日本の抑止力は不十分だ」との声も上がっている。

 安倍政権の下で、国是である「非核三原則」の見直し論が公然と出る可能性もある。後退する核廃絶決議は平和外交の「金看板」がさび付くことを意味する。それでよいのだろうか。

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