【越山若水】コミュニケーション能力は高いほどいいという時代だから、お笑い芸人にはちょっと憧れる。ボケたりオチを付けたり、自在の話術で爆笑を誘いたい。けれども―▼そもそもコミュニケーション力って、何だろう。思想家の内田樹さんに、印象深いエピソードがある。フランスのスーパーで買い物をしたときのことだという▼レジの女性に何か尋ねられた。聞き覚えのある単語なのに分からない。3回ほど聞き返しても分からない。ついに先方は諦めたが、内田さんは意を決して質問した▼「先ほどあなたは何を聞いたのですか」。カウンターに身を乗り出し、一語ずつ区切って話した。すると女性も同じように一語ずつ「郵便番号」を尋ねたのだと説明してくれた▼レジで郵便番号が必要な理由はともかく…。ここにコミュニケーション力の本質がある(「日本の覚醒のために」晶文社)。つまり、途切れた意思疎通を再開する、その力をいう▼きのう、第4次安倍晋三内閣が発足した。前回改造の新任閣僚は国会答弁の機会が一度もないうちに衆院が解散されたから、全く出番がなかった▼特別国会は当初、首相指名などだけ行い論戦はなさそうだった。例のモリカケ問題で野党の追及を避けたいという思惑らしいが、さすがに逃げ腰は印象が悪い。会期は39日間ある。安倍内閣のコミュニケーション力をしかと拝見しよう。

関連記事
あわせて読みたい