【論説】これも日本経済のおぞましい断面なのだろう。中小企業への融資を本業とする政府系金融機関、商工中金が大規模不正融資を続けていたことが判明。経済産業省は5月に続く2度目の業務改善命令を出した。経営トップらの退任で済む話ではない。世耕弘成経産相は「解体的出直し」を求めているが、歴代トップの多くは所管する経産省からの天下りである。組織ぐるみの不正を見抜けなかった監督責任はさらに重い。

 国内100店舗、海外にも4店舗を構える商工中金は、大災害や金融危機で業績が悪化した企業の資金繰りを国が支援する「危機対応融資」の窓口。同融資は貸出残高全体の約3割を占める基幹業務である。

 不正は4609件、融資実行額は計2646億円に上る。危機対応融資制度は米国発のリーマン・ショックが起きた2008年度に施行された。不正は従来の調査で11年度以降とみられたが、全容調査で制度創設当初から行われていたことが明らかになった。

 確かに、回収難を恐れる民間金融機関を補完し、苦境に陥った中小企業を低利融資で救済するのは重要なセーフティーネット機能である。しかし、実態はどうだったのか。

 商工中金は経営が健全な企業に対しても、経営難であるかのように書類を改ざんし融資実績を水増しした。民間ではできない融資への公的補助を、自らの業績拡大に流用していたことになる。不正は福井を含む97店で行われ444人が関与。「融資ノルマ」は組織全体に及んでいたようだ。

 これをコンプライアンスつまり法令順守の欠如といってしまえば簡単だが、根はもっと深い。今春の調査報告書では、組織内の「場の空気」によるものと結論付け、特殊・例外的な事案ではなく「日本型不祥事の典型」と結論づけた。

 だが、経産省は根本原因として「経営陣が過度な業績プレッシャーをかけて計画値の達成を推進した」と批判した。手口は悪質で民業圧迫も甚だしい。国が株式の46%を握る「半官半民」の中途半端な経営体制が統治能力を緩ませ、お上の顔色をうかがいながら組織防衛に走ったといえる。

 全国信用組合中央協会が「民業補完に徹し、民間金融機関の手の届かないところへ融資すべきだ」と批判したのはもっともだ。日銀のマイナス金利などで苦しい経営の地域金融機関をさらに追い込んでいないか。

 商工中金は全体の2割超に当たる役職員約800人以上の処分に踏み切り、安達健祐社長も退任する。「再生のめどが付き次第」というが、日本経済は既に低成長に移り縮小、カネ余りが顕在化している。政府系金融機関の存在意義が問われる時代である。

 商工中金は05年の政策金融改革に伴い、15年までの完全民営化が決まっていた。金融危機による先送りで体制を温存したのは経産省である。抜本的な見直しへ「解体的出直し」が必要なのは経産省そのものではないだろうか。
 

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