【論説】この秋、「スポーツ弁当」と呼ばれる弁当が県内で発売された。スポーツをする人たちの活力源となるよう県が呼び掛け企業や団体が開発。現在は11の業者が、栄養面や地元の食材の活用など基準をクリアした弁当を注文販売している。

 今月14日に福井市内で開かれた第1弾のお披露目会に並んだ弁当。彩りもよくどれもおいしそうだが、印象的だったのは、ご飯の量の多さだ。エビフライや唐揚げなどの揚げ物類はほとんどない。「ご飯は一般的な弁当の3割ほど増やしている」と県の担当者は説明した。

 ■糖質がエネルギー源■

 コメに含まれる糖質は運動中の主要なエネルギー源となる。糖質は車にたとえればガソリン。食事の中ではご飯が最も大切なメニューなのだ。

 「スポーツ」と銘打っていても、基本とする栄養バランスは決して特別なものではない。摂取カロリーに占める栄養のバランスが重要とし、三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物の構成比率(PFC比)は、一般的に理想とされる15対25対60を目安にしている。つまり、肉などタンパク質の割合は全体の15%で、60%が炭水化物のご飯。あのご飯の割合はこの比率に沿って計られていた。

 お披露目会で今回の弁当開発のアドバイザーを務めた公認スポーツ栄養士こばたてるみさんは「強くなるには丼飯!」「もっとご飯を食べて」と発言、主食のコメの大切さを訴えた。こばたさんによると、ご飯茶わんのサイズを丼に変えるよう徹底し、高校生のサッカーチームを1年間サポートした結果、体重が平均約4キロ増えた一方、体脂肪率は減少したという。

 スポーツ弁当にはこのほか、▽ご飯に含まれる糖質や脂質のエネルギー変換に不可欠なビタミンは、ビタミンB1、B2を多く含むゴマや昆布、魚のアジや豚肉、キノコ類でとる▽抗ストレス作用のあるビタミンはトマトやピーマンなどから▽消化をよくするために揚げ物類は控える―など、ご飯を中心とした栄養をフォローするポイントが細かく掲げられている。

 先の高校生のように体重が増えるというと抵抗があるが、おかずを食べ過ぎてカロリー過多になっている現状を考えれば、そう目くじらをたてる必要はないようだ。ご飯の糖質は脳にも良い影響を及ぼす。スポーツ弁当の栄養学は、スポーツ選手だけでなく、一般の人の食生活にも視線を投げかけている。

 ■食育として根付いて■

 スポーツ弁当は、来年の福井国体・障害者スポーツ大会に向け県が6月に専門家らとプロジェクトチームを設置し開発を進めてきた。県は随時審査し、認定弁当を増やしていく考えだ。11月には弁当を県民に即売する機会も設けたいとしている。

 側面には食育がある。「食育のゴールの一つは、食事を選ぶ力を身に付け、自己管理能力を高めること」とこばたさん。特に子どもたちには、食全般に関するよりよい知識を持ち、自分に必要なものを考え行動できるようになってほしい。あわら市出身で東京のNPO法人に勤務する女性が提唱した、世界の子どもたちを貧困から救う「おにぎりアクション」など食やご飯に関するプロジェクトとも取り組みがつながれば、コメの消費拡大への意識とともに、多角的に関心が広がるだろう。

 食欲の秋、スポーツ弁当の登場を機に体力づくりという視点だけでなく、食の正しい在り方や考え方が多くの人に根付いていくように願う。

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