【論説】今後の中国を占う2期目の習近平(しゅうきんぺい)指導部が発足した。共産党第19期中央委員会第1回総会で党中枢の政治局常務委員7人を選出。ナンバー2の李克強(りこくきょう)首相が留任し、「ポスト習」候補と目されていた若手2人は選ばれなかった。習総書記(国家主席)による後継候補の遮断は、権力を分散させず「1強体制」を盤石にするものだ。5年後の2022年以降も権力の長期維持を図る布石であろう。

 新たな国家目標は「社会主義現代化強国」の建設である。一方で「人類の運命共同体」の構築も目指すと訴えた。「強国」「共生」「平和」をいかに実現するか。日本は動向を見極め入念な対中戦略を講じたい。

 先の第19回共産党大会の活動報告で、習氏は中華民族の偉大な復興とする「中国の夢」実現に向け、挙党態勢で臨む方針を示した。また「党の指導」の下で軍事力を強化し、反腐敗闘争や政治的引き締めを継続する考えを鮮明にした。このことは、外交、内政の両面で強硬路線を貫く意志を強く示したことになる。

 習氏は共産党の正統な後継者を自任し一党独裁を正当化する強硬派である。史上最大規模の反腐敗運動を展開、国民から幅広い支持を得た。と同時に政敵を排除して権力を集中。党の「核心」に位置付け、西側民主主義の受け入れを拒否し言論統制や民主活動家に対する締め付けも強めた。

 党大会では党の行動指針である規約に「習思想」を盛り込むことに成功。毛沢東(もうたくとう)思想、とう小平(とうしょうへい)理論と並ぶ指導思想となり、2人に比肩する歴史的指導者として強大な権威を得たことを強く印象づけたのだ。

 体制の安定は重要だが、権力の集中やイデオロギー重視は弊害も伴う。毛への個人崇拝が招いたあの「文化大革命」の再来を想起する知識人も多い。

 長期的に国内の安定を保つには民主化に向けた政治体制改革や経済の質の向上を図る改革が不可欠だ。中でも最重要課題は経済である。習氏は党大会の報告で国有企業の過剰生産の解消や債務の削減、技術革新、農村振興などの経済改革の必要性を改めて訴えたが、一向に進展していない。

 中国の経済成長率は年々低下、昨年は6・7%と26年ぶりの低い伸び率だった。目先の成長率が下がれば国民の不満は強まる。習政権は難しいかじ取りを余儀なくされている。

 とはいえ、人口13億人の中国は政治、経済、軍事の各分野で国力を増す大国でである。国際協調路線ではなく、覇権主義的な強国路線で米国に代る中国中心の国際秩序形成を図るなら、国際社会の激しい抵抗に遭うのは必至だ。

 そこに各国と共生を図る運命共同体構想の深謀遠慮があるのだろう。習氏が推進する現代版シルクロード構想「一帯一路」を支える理念ともなる。安倍晋三首相は「一帯一路」に支持を表明し、海洋対立で悪化した日中関係に改善の兆しが出ていた。早期に習氏と会談し、関係修復の具体的な道筋を探るべきだ。

関連記事
あわせて読みたい