【論説】「国難突破」と大げさにあおり立て、解散・総選挙に走った安倍晋三首相。目的は自身の「苦難突破」にあったようだ。しかし、日本を襲う国難の最たるものは、加速する地方の衰退であろう。選挙では「地方創生」という最重要課題を多角的に論じ合うことはなかった。それは、政治の力量では目立った成果を出せないでいるからだ。

 人口減少、少子高齢化による過疎化の加速、疲弊する一方の現状を是正せずして地方創生はない。自民党は政権公約に「地方が主役の地方創生」を掲げた。だが、3年たっても全く実現できない根本的な問題が東京一極集中である。

 政府は2014年12月、人口減少克服と地域経済活性化に向けた5カ年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を閣議決定。重要目標に、転入者の数が転出者を大幅に上回る東京圏の転入超過を20年に解消すると明記した。

 総務省の16年人口移動報告を見ると、東京圏は転出が35万9922人だったのに対し、転入は47万7790人に上った。東京圏の転入超過は12万人近くあり、転出入均衡には程遠い。

 もともと、このままいけば40年には全市町村の半分が「消滅可能性自治体」になるという日本創成会議の衝撃的試算に呼応する形で総合戦略を立案した。国主導で交付金をちらつかせると各自治体は競って婚活や子育て支援、移住促進などの対策を盛り込んだ地方版総合戦略をまとめた。

 しかし、このいびつな一極集中現象はもう22年も続いているのだ。地方からは「国全体の構造的な問題であり、各自治体の力ではどうしようもない」といった嘆きが聞こえてくる。

 政府は知事会の提案を受け入れ、東京23区にある私立大の定員増を18年度は認めないことを決めた。地方の大学振興も盛ったが効果は全くの未知数だ。

 政府の有識者会議は先の会合で政府の「転出入20年均衡」政策を強化する方向で一致した。もはや達成は不可能な状況にもかかわらず、目標を見直さなかったのは衆院選への影響を考慮したのであろう。

 自治体は地方創生に懸命な努力を重ねている。選挙でもっと与野党が議論すべきだったが、自民党は25の政策を並べ、地元候補はそれをなぞっただけ。希望の党代表の小池百合子東京都知事は大学定員抑制に反発し、大阪府、愛知県の3知事は都市重視の共通政策を表明した。その中の「東海道メガロポリスのさらなる発展」は大都市の論理による地方切り捨てに等しい。

 政府関係機関の地方移転は文化庁と消費者庁の一部が京都や徳島に移ることが決まった程度だ。企業の本社機能移転や若者回帰も思うように進まない。

 西川一誠知事が選挙結果を受け、東京一極集中の是正に本腰を入れるよう指摘し「地方重視の政治実現」を強く求めたのは当然である。赤字国債に頼る大企業・大都市優先のアベノミクスで「この国を、守り抜く」ことなどできるはずもない。
 

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