【論説】22日に投開票された越前市長選で現職の奈良俊幸氏が4選を決めた。合併市の誕生から、堅実な手腕でリードしてきた3期12年を有権者が認め、次の4年間のかじ取りを託した形だ。

 5年余り後の北陸新幹線南越駅(仮称)開業へ向け、駅周辺整備という市域を超えた行政課題が待ち構える。選挙で耳にした批判も受け止め、評価の高い実行力で突破してほしい。

 前回と同じ顔ぶれでの一騎打ち。新庁舎の建設位置を問うた前回と違い明確な争点はなく、悪天候もマイナス要素だったが、投票率は57・80%と約10ポイント上回った。衆院選とのダブル選効果とみるべきだろう。

 本紙の世論調査では若い世代ほど関心度が低かった。同市長選で初となる18、19歳は権利を行使したのか気掛かりだ。白紙委任を含め投票しない選択も有権者の意思表示だが、市の将来に結果責任を共有していることを忘れてはいけない。

 奈良市政の3期目は「半世紀に一度のまちづくり」をうたい▽国体競技会場となる市総合体育館と中央公園の再整備▽老朽化した市庁舎の建て替え▽南越駅の周辺整備―の三つを重点課題として取り組んできた。

 前の二つは道筋がつき、残る南越駅の周辺整備を第一の公約に掲げた。人口50万の「広域高次都市機能」と位置付け、交通結節拠点としてのポテンシャルを生かすために民間の進出を促し活用すると訴えた。

 武生駅を中心にしたまちなかと、南越駅周辺をすみ分ける知恵であり、夢は膨らむ。ただ、大手商業施設の進出など現時点でプランは未知数だ。魅力がなければ通過駅となり、逆に新駅周辺だけがにぎわえば、まちなかの空洞化が進む。

 奈良氏は市中心部へのアクセス整備、まちなか循環にも力を注ぐと強調した。世論調査でも2次交通の充実を求める声は強い。伝統工芸、まちなか観光、コウノトリが舞う環境を生かした食のブランドなど素材はそろう。地域資源をどう結びつけるか。丹南をはじめとする周辺自治体との垣根を越えた連携も不可欠だ。

 大久保恵子氏は現職の行政手法を「不透明」と批判し、草の根の選挙運動で出遅れをカバーした。具体的な政策は市民に伝わりづらかったが、前回より4千余り票を増やした。新庁舎の建設地選定を巡り今もくすぶる不満や、庁舎建設地から出土した遺構の保存対応を巡る一部市民の反発をくみ取ったとみていい。奈良氏には、より丁寧な説明や情報の開示が求められる。

 越前市の人口は今年1月から9月末までに237人増えた。総合戦略に掲げた「子育て・教育環境日本一」へ施策を展開し、好調な企業雇用と相まって地方が抱える難題に光を見いだした。1500年の歴史、文化が脈々と息づく強みを生かしたまちづくりを、市民との協働で築く4年間になると期待したい。

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