【越山若水】襲いかかるような強風と土砂降りの雨。台風が接近したきのう、ほうほうの体で投票所にたどりついた人もいただろう。よその県では開票を延期した所も相次いだ▼理由がのみ込めないまま解散したかと思えば希望の党ができ、民進党は解体。一方で立憲民主党ができた。そして荒天の投開票日。目まぐるしい衆院選だった▼自民党が単独過半数を確保し、安倍晋三政権の継続が決まった。民意は5年近い実績を評価したということだろう。半面、政権と対極にある立憲民主党が躍進した▼「上から目線の政治から草の根の政治へ」。枝野幸男代表の主張が支持を集めたのは、強引さが目立つ1強政治を嫌った結果でもあるだろう。これもまた大事な民意に違いない▼おこがましくも、首相に読んでほしい司馬遼太郎さんの一文がある。イラクがクウェートに侵攻した1990年、国際問題に日本は一つの徳目で対応するしかないと書いている▼論語にもある「忠(ちゅう)恕(じょ)」。まごころ・まじめ、思いやること・ゆるすこと。日本人が自然と身に付けた徳目を以(もっ)て、と(「風塵抄」中央公論社)▼「ついでながら」と、司馬さんは大事なことを言い遺した。忠恕は地味なものでスタンドプレーは似合わない。が「真の勇気」がある、と。加えて、忠は「忠実」と使う場合の意味であって「忠義」の忠ではないとも念を押している。

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