正木組事務所に使用差し止め仮処分の公示書を貼る執行官(中央)=20日、福井県敦賀市本町1丁目(一部加工)

 暴力団正木組(福井県敦賀市)と宮原組(福井市)の事務所使用を禁じた20日の仮処分決定は、安心して暮らしたいという「当たり前の願い」を実現するため、申し立てに手を挙げた周辺住民の勇気が導いた。

 今回の使用差し止め申請は、昨年2月に正木組の事務所に銃弾が撃ち込まれた事件が直接の引き金ではあるが、弁護団の井上毅事務局長(福井弁護士会)は「暴力団は本質的に縄張り争いや抗争をする性格を持っている組織。具体的な事件が起こらなくても、組事務所があることで安全に対する不安、普通の生活ができない恐れがある場合、使用差し止めを請求できる」との見方を示す。

 「徒歩で通園する親子は事務所前を通らないよう遠回りしていた。何もなくても怖かった」。敦賀市中心部にある正木組事務所から150メートルほどしか離れていない幼稚園に子どもを預けている30代の母親の率直な心境だ。福井市にある宮原組事務所の近くに長年住んでいる70代女性も「実害を被ったことはないが、事務所の前を通るのは正直怖いし、気を張る」と語る。

 住民にとっては、組事務所が近くに存在するだけで安心して生活できない環境だった。それだけに使用禁止に向けた思いは強かった。

 発砲事件の後、正木組事務所周辺で2回、宮原組事務所周辺で1回、それぞれ両市の各種団体でつくる暴力追放市民会議が街頭行進するなど、暴力団排除の機運醸成に取り組んできた。

 使用禁止の決定を受け、正木組事務所のある同市本町1丁目で飲食店を経営する60代男性は「街のど真ん中に組事務所があると風評も出るし、立ち退きにつながるならいい」と今後に期待した。

 宮原組事務所前の歩道は児童の通学路から外されているが、近くで働く50代男性は「組事務所がある以上、いつ何が起こるか分からない。地域や子どもの安全面を考えると、裁判所の決定が出て良かった」と安堵(あんど)した様子だった。

 各暴力追放市民会議の会長を務める両市の市長もコメント。渕上隆信敦賀市長は「住民の機運の高まりが実を結んだものと喜んでいる」、東村新一福井市長は「『暴力のない安全で安心して暮らせる福井』の実現に向けた第一歩と考えている」とした。

 「安心して住みたいという住民の思いを認めた当たり前の決定。でもそれが日本の社会ではなかなかできなかった。ようやく今、全国各地でこういう動きが起きている」。日弁連の民事介入暴力対策委員長を務めた経験のある北川恒久弁護団長(福井弁護士会)はこう評価した。

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