減反のため一面の水田に植えられたソバ。減反協力農家へのコメの直接支払交付金は18年産から廃止される=福井県あわら市

 農家の所得向上へ、国は農業競争力強化に向けた改革を進めている。2018年産からはコメ生産調整(減反)が見直され、減反協力者へのコメの直接支払交付金が廃止になる。稲作中心の福井県内の農家にとっては大きな収入減になり「経営を維持するので精いっぱい。競争力強化までは考えられない」との声は多い。減反見直しは過剰生産による米価下落の可能性もはらみ、農家の不安は増している。

■対策はまだまだ


 「10アール当たり7500円の交付金が廃止されたら年間収入の約3分の1がなくなる」。越前町の黒田市村さんは嘆く。今年約64ヘクタールで主食用米を栽培したあわら市の農事組合法人役員も「年間約500万円の収入減になる。どう賄えばいいのか…」と頭を悩ませる。


 全国農業経営コンサルタント協会の重森宣彦税理士(福井市)は「コスト削減など県内農家の具体的対策はまだまだ。そのまま収入減になるところが多いのではないか」と推測する。


 17年度の直接支払交付金の額は国全体で約714億円。県農政連は、廃止で浮いた財源を農作物に対する予算として維持、確保するよう国に要請している。


■産地主導へ


 減反見直しは米価下落を招く恐れもある。国が都道府県に示してきた生産数量目標は18年産からなくなり、国は在庫量や需要予想の情報などを提供するだけになる。需給調整は国主導から産地主導へと大きく転換する。


 福井県は毎年、目標を守り米価安定に貢献してきたが、大消費地に近い茨城県や新潟県などの産地は目標以上の生産を続けている。福井県農政連の北島友嗣副会長は「今年のコメの単価が上がったことで、来年の生産量が増えないか心配。全都道府県が需要に応じた生産量を守るよう全国組織をつくって調整すべきだ」と訴える。


 転作作物の麦や大豆、ソバ、飼料用米などに対する直接支払交付金の水準が維持されるかに関しても、農家の不安は大きい。同交付金は販売単価が低い転作作物に対する穴埋めに当たり、減額になれば採算は取れなくなる。高単価の主食用米へシフトする農家が増え米価に影響を及ぼす可能性もある。


■もっと現場目線に


 作物の多様化で農家の所得向上を図ろうと、県やJAは園芸作物への転作を推進している。JA県経済連は15年から、加工用キャベツを定額で買い取る制度を開始。全体の作付面積は年々増えているが、10アール当たりの収量をみると15年の3・1トンに対し16年は9月の大雨の影響で1・6トンに。天候の影響を受けやすいのが弱点だ。


 越前町の農事組合法人「陶部グリーンファーム」の山本政二組合長は「園芸は稲作の機械が使えず手間がかかるし、利益が出るのかも分からない」と腰は重い。経済連は農機のレンタルや肥料の購入費助成などで支援を続け「天候が悪くても収量が安定するよう指導していきたい」としている。


 重森税理士は「作物ごとの収支を計算して効率のよい営農をするなど、競争力強化へ農家の意識改革も必要な時代になってくる」と指摘する。しかし福井市の農事組合法人役員は「主産物のコメの国内消費量が毎年8万トンずつ減る中で競争力を高めるのは限界がある。地方の農家は自分たちの経営で精いっぱいなのが現状。もっと現場目線の政策をしてほしい」と訴える。

関連記事
あわせて読みたい