九頭竜川に不時着した小型機から脱出する際に使用したとみられるライフジャケットなどを運ぶ捜査員ら=15日、福井市

 福井空港から北西約5キロ、高度約300メートルを飛行中、突然エンジントラブルが起き、機体の高度が下がり始めた。「空港までもたない」。操縦していた松原六郎さん(66)は2、3キロ先の九頭竜川に着水することを決意。あわや大惨事になるところだったが、冷静な判断と操縦で九死に一生を得た。

⇒4人乗り小型機が九頭竜川に不時着

 ハンドルは操作できたため、眼下に見えた幅200~300メートルある川に向かって徐々に高度を下げ、風向きを考慮して川の南から北に向かって着水した。音や衝撃などはあまり覚えていない。無事降りることだけで精いっぱいだった。機体は10秒ほど水面を走り、水の抵抗で止まった。

 松原さんは「着水も着陸も要領は同じ」と自分に言い聞かせ、死は意識しなかったという。搭乗者3人も「スムーズに着水したため命の危険を感じることはなかった」とパニックになることはなかった。

 松原さんは自家用パイロットの免許を10年ほど前に取得し、月1回程度、フライングクラブの活動で操縦していたが、着水の訓練は経験がない。ただ、普段から万が一の際どこに不時着するかを考えながら操縦していたという。

 着水後は救命胴衣を着て機外に脱出、泳いで河川敷に渡った。ほどなく現場に到着した県防災ヘリに1人ずつ引き上げられた。脱出後、機体は水没した。松原さんらは「多くの人に迷惑をかけてしまった」「迅速な救助に大変感謝している」などと話した。

 北陸3県を管轄する国土交通省大阪航空局小松空港事務所は、飛行機が川に不時着した管内の前例は「確認できていない」としている。北陸在住の70代のベテランパイロットは「川へ不時着し、けががなかったことはこれ以上ない最高の判断」と評価した。

 福井地方気象台によると、トラブルが発生した午後3時35分ごろ、県内は高度3~4キロに厚い雲がかかり小雨が降っていたが、地表付近の視程は10キロ以上で見通しが良かった。同時刻の福井空港の瞬間風速は7・7メートルで、強い風は吹いていなかったとみられる。

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