弾道ミサイル発射計画に備えて開かれた県と市町などの連絡会議=8月18日、福井県庁

 日本上空を通過する北朝鮮のミサイル発射が続く中、今回の衆院選は安全保障問題が大きな争点になる珍しい選挙といえそうだ。15基の原発を抱える福井県民からは「原発が狙われたら、私たちはどうなるの?」といった不安の声が多く、嶺南の有権者は「何かあったときに、どうやって国民を守るのか。その答えを示してほしい」と訴えている。

  ■4分で避難?■

 「05時58分ごろ、北朝鮮西岸からミサイルが東北地方の方向に発射されたもようです」。8月29日午前6時2分、内閣官房の緊急情報「Em―Net(エムネット)」の一報が、福井県や県内市町にメールで入った。

 北朝鮮が発射した弾道ミサイルは、北海道襟裳岬上空を通過し約2700キロ飛行、6時12分に太平洋上に落下した。全国瞬時警報システム(Jアラート)は12道県で鳴り響き、このうち9道県計24市町村で防災無線などの不具合が確認された。福井県や県内市町では、十数分おきに流れるエムネットの情報を正常に受信したという。

 北朝鮮は9月15日にも、日本上空を通過するミサイルを発射。県安全環境部の木村正二危機対策監は「これまでと(安全に関する)状況が違うことは明らか」と気を引き締める。

 二つの事例をみると、発射警報から日本上空通過まではわずか4~6分。国は「頑丈な建物や地下に避難する」などの行動例を示しているが、福井県連合婦人会の田村洋子会長は「4、5分で避難なんて無理。田舎なら近くにコンクリートの建物なんてない。結局なすがままだろうという不安を、みんな抱えている」と話す。

  ■無防備な印象■

 安倍晋三首相は今回の衆院選を「北朝鮮の脅威にいかに対応するかを決める選挙」と位置付ける。「対話か圧力か」といった外交の在り方が議論の中心になっているが、県民、とりわけ嶺南在住者にとっての直接的な不安は「北朝鮮の脅威が原発に向かいはしないか」ということだ。小浜市の男性(62)は「ミサイルで原発が狙われたら、われわれはどこへどう逃げたらいいのか」と話す。

 7月6日に高浜町を訪れた原子力規制委員会の田中俊一前委員長は、町民との意見交換会の席で「ミサイル攻撃を想定した対策は立てていない。原子力規制の範囲を超えている」と発言。「大型航空機落下対策があり、相応の対応はできる」と述べたものの、武力に対して無防備な印象を与えた。

  ■防衛相に要請■

 北朝鮮情勢が緊迫する中、西川一誠知事は9月21日、小野寺五典防衛相に原発の防御や自衛隊の基地整備・部隊配備を緊急要請。「地域の安全をいかに守るか、防衛上、万全の措置を講じてほしい」と訴えた。

 これに対し、小野寺防衛相は「イージス艦での対応や緊急時にはPAC3(地対空誘導弾パトリオット)部隊を速やかに展開する」と答えた。

 ただ、何を基準にどう展開し、県民の命を守るのか、明確なところは見えていない。おおい町の50代男性は「北朝鮮が日本を攻撃する場合、ターゲットは米軍基地か原発になるのではないか。安全保障が争点であれば、各政党には、特別危険な地域といえる沖縄や福井に関する安全対策や、緊急時の避難シミュレーションなどを示してほしい」と訴える。

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