本を開くと、「水と卵が入ったビーカー」と「食卓塩のビン」がワンセットで並んだ写真が左右のページに1枚ずつ。右側の写真ではビンに塩が詰まっていたのに、左側では減っている。右側でビーカーの底に沈んでいた卵が左側では浮いている。私たちはそれだけで卵が浮いた理由が分かってしまう。

 鉛筆や五円玉といった日常品を使って、「へー、こういう分かり方もあるのか」と思わせる写真やイラスト、図、文章が60例。パズル解きやクイズの要素を取り込みながら、ユニークな発想と仕掛けで読者を新たな認識の世界に導く。

 と書いても、なかなか伝わらないかもしれない。著者はNHK・Eテレの幼児向け番組「ピタゴラスイッチ」の監修者と言えば、あ、なるほどと腑に落ちる人もいるのではないか。

 「この頁にあなたの右手を左の写真のように置いてみてください」と読者の参加を誘う作品もある。あるいは、私たちは横書きの文章の右端と次の行の左端とを無意識につなげて読んでいるが、「文字の紐」という作品では、行の途中でこんなふ         うに空間が空いても、読者は離れた「ふ」と「う」の間を見えないひもがつなげているかのように文章を読めることを示す。私たちの読み書き能力は多少規則から外れた文章にも対応できるのだ。

 各作品には、いわば種明かしのミニ解説が付き、後半4分の1は解説的エッセーを収録している。読後は遊んでもらったような、遊ばれたような、でも少し賢くなった気がした。

(中央公論新社 1900円+税)=片岡義博

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