RAY『レイシング』

 大阪府出身のシンガーソングライターが放つメジャー・デビュー・アルバム。ジャンルを特定すると、レゲエやヒップホップとなるが、“ルーズな服装の強面がダミ声で挑発”といった先入観とはかけ離れている。

 全14曲、まず滑舌の良さや飾らない声質など、歌の上手さに驚く。成功するまで走り続ける(まさに“レイシング”=“RAYシング”!)ことを誓った『Yu know mi』やレゲエのリズムの中で、緩急をつけつつも淀みなく歌う『DON’T STOP DA MUSIC』など、誰もカラオケで真似できそうにない。

 さらに、聞き進めると、人間愛と音楽愛に満ちた楽曲の多さに感心する。好きな洋服ブランドへの感謝を歌にした『621』や、関西弁での穏やかな応援歌の『人間』など、個人的なラブソング偏重の近年のポップスとは一線を画し、ただ音楽が好きで、人と繋がっていたいという想いが伝わる。

 もし時代が異なれば山下達郎のような路線を進んだのかもとも感じた。本作の魅力に気づけば、物事に潜んだ誰かの思いやりに、より気づくようになるはず。

(ビクター・2700円+税)=臼井孝

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