【越山若水】福井市内の書店で偶然、手に取った詩集には絶望と、そこから立ち上がった女性の覚悟がつづられていた。武澤順子著「生きてやろうじゃないの!」(青志社)▼52年連れ添った夫を亡くした3カ月後、東日本大震災に見舞われた。雲よ、と問う。「小さな蟻(あり)のように/人々がもがき苦しむさまを/黙ってみていたの?」▼「絶望」と題した1編では「相変わらずの放射能騒ぎ 福島県産 野菜牛乳 不買決定/泣くに泣けない四次災害ではないか」と行き場のない憤りを書きつけた▼武澤さんは福島県相馬市に住む。大震災から6年半がたち84歳になった。住み慣れた家を失い肩も腰も痛いけれど、生き残った人間には何か役目があるのだろうと腹をくくった▼ボランティアに支えられた。「ぼろぼろになっても 私は生きる/災害で知った命の重さなのだから/今度は出来ることならば/助けられる側よりも 助ける側に立ちたい」▼第48回衆院選がきのう公示され与野党8党などから計1100人超が立候補した。5年近くにわたる安倍政治への評価や憲法、消費税、原発政策などが主な論点になる▼活発な舌戦は歓迎するが、立候補者には胸に留めておいてほしいことがある。自身を叱咤(しった)して立ち上がった武澤さんに、政治は何か力になったかという疑問だ。苦しむ人々を横目に、皆さんは雲でいてはいけない。

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