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 『百円の恋』が絶賛された武正晴監督が、ボクシングの次に選んだ題材は、“プロレス&K−1”である。佐藤江梨子と瑛太のW主演映画で、瑛太が演じるのは売れない役者のヒデオ。つまり、彼が格闘技と出合って一皮むける同様の展開かというと…さにあらず。

 サトエリ扮するもう一人の主人公は、格闘技団体で裏方として働くカナコ。ヒモ同然のヒデオを事実上養っている。裏方? そうか、スーツアクターを主人公にした武監督の出世作『イン・ザ・ヒーロー』とのハイブリッドなのか!と思うと、それもまた違う。

 今回は主人公が何かに打ち込んだり達成する話ではなく、格闘技はあくまでも背景で、軸となるのは“ラブコメ”。10年来のもはや腐れ縁のようなカップルが愛を確かめ合う、至ってドメスティックな内容なのに、それが大手格闘技団体を巻き込み、恋の大騒動へと発展していく痛快さ!

 にもかかわらず、スラップスティックになるギリギリ手前で踏みとどまるバランス感覚と、何よりヒデオが最後までダメ男のまま成長しないことがリアルで、それによってエンタメとしてしっかり弾けながらも説得力が維持されているのだ。武監督の、職人監督の枠に収まらない作家性を称えたい。

 だからこそ、ラストは自転車の二人乗りで走り去る二人を見守るカットで終わってほしかった。その後の説明的な数カットは、蛇足でしかない。★★★★☆(外山真也)

監督:武正晴

出演:佐藤江梨子、瑛太

10月14日(土)から全国順次公開

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