【越山若水】ユニークな心理学の実験が行われた。場所はカナダのブリティッシュ・コロンビア州、国立公園に架かる長さ137メートル、高さ70メートルのつり橋。19世紀末に建設された▼ワイヤ製ゆえ、すぐに傾いたり揺れたりする。おまけに手すりが低く、はるか下の急流に転落しそうになる。まさにスリル満点、人気の観光地の一つだという▼このつり橋を男性被験者に渡ってもらう。するとかわいい女の子がやって来てアンケートを依頼。彼女は後で説明したいからと、電話番号を書いたメモを手渡した▼同じ実験を小川の上の高さ3メートルの木造橋でも行った。さて何人の被験者が電話をかけて来ただろう。恐怖のつり橋を渡った男性では半数が電話をしてきた。一方、安全な橋の場合はわずか12%だった▼どうやら高所に上った恐怖心からアドレナリンが分泌され、恋愛感情にすり替わったようだ。やはり恋の芽生えにはスリルが効果的らしい(「悪癖の科学」紀伊國屋書店)▼衆院選があす公示される。安倍晋三首相は演説で北朝鮮の脅威を盛んに強調。数十年も前から指摘される少子高齢化を含め「2大国難」に掲げている▼この危機を突破するには、経験豊かで安定した自公政権が必要だと訴える。不安をかき立て自身への好意を喚起する筋書きは、何やら「恐怖のつり橋」実験のようだ。恋愛と選挙、果たして効果は同じだろうか。

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