午後6時、終業のチャイムが鳴ると同時に小坂有希さん(41)=仮名、福井市=は、駐車場まで全力疾走で向かう。小学3年生の長男(9)を児童クラブに迎えに行くためだ。最終の6時半に5分でも遅れると「お時間お願いしますね」と小言を言われる。

 勤めているのは福井県内の上場企業。定時に帰らなければならないこともあり、休むことなく全力で仕事をこなす。ただ、昇進は半ばあきらめている。元々は会社の中枢で残業もいとわず働いていたが、出産を機に時短勤務を選択。最大2時間短縮できるが、1時間にした。「2時間にするなら戻る部署がない」と言われた同僚もいたからだ。「時短の社員は戦力として扱われない暗黙のルールがある」

 次男が3歳になり時短を取れなくなったタイミングと、長男が時間厳守の児童クラブに通う時期が重なり「責任が比較的軽く、仕事も難しくない今の部署に異動させてもらった」。残業するのが当たり前という風土が色濃く残る中、やむを得ない選択だった。

 定時で帰る女性社員で昇進している人はいない。そもそも女性管理職が数えるほどしかいないという。会社は県の「ふくい女性活躍推進企業」に登録されているが、実体が伴わない、体裁だけとしか思えない。

 女性の採用や昇進に向けた企業の取り組みを促す女性活躍推進法の施行から1年半。国の掛け声も大きくなっているが、小坂さんは冷ややかにみる。「社会の受け皿や残業前提の企業風土が変わらない現状で、何を言っているんだろうって思う。人事の評価軸を大きく変えるくらい思い切ったことをしないと…」

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