【論説】東京電力が目指す柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査が最終段階に来ている。10月4日以降の定例会で再度議論し、判断を下す方向だ。東電の命運が懸かる審査だが、先を急ぐ前に立ちはだかるのが過酷事故を引き起こした福島第1原発の廃炉作業である。先行き不透明なままでは安全性への信頼は得られまい。

 廃炉に向けた中長期ロードマップ(工程表)について、政府は1、2号機のプールに残る使用済み核燃料の取り出し時期を改定。現行計画よりさらに3年遅らせることを決定した。

 規制委は柏崎刈羽原発の審査で「廃炉を主体的に取り組む覚悟と実績を示せない事業者に原発を運転する資格はない」と厳しく指摘してきた。政府、東電によほどの覚悟と実行力が求められるのは当然である。

 工程表の改定は2年ぶりとなる。1、2号プールの使用済み核燃料取り出しは開始時期が2020年度から「23年度めど」とした。経済産業省は、1号機で格納容器を覆うコンクリート製ぶたのずれ、2号機で排気筒の支柱破損が確認されたためなどと説明する。

 さらに1〜3号機の溶融核燃料(デブリ)も、取り出しは21年内開始を維持したが、初号機の詳細な工法の確定時期は18年度前半から19年度に遅らせた。作業は原子炉格納容器を水で満たさない「気中工法」を軸に、格納容器底部の横側から始めるという。「時間を掛けて丁寧に検討したい」との姿勢は理解できるが、作業開始までの期間が短くなれば、目標達成は難しくなるのではないか。

 これまでロボットカメラでデブリとみられる塊が確認できたのは3号機だけである。その性状も不明で「取り出し法を確定できる状況には程遠い」というのが規制委の見方だ。最難関の作業を安全第一に、確実に進められる保証はない。

 未曽有のメルトダウンを起こした複数原発で廃炉作業を進めようとする取り組みは世界に例がなく、全てが手探りである。

 だが、政府、東電は「事故収束」を急ぐあまり廃炉対策を甘く見たのではないか。「順調な廃炉」をアピールする好機となる20年の東京五輪も視野にあろう。

 これで11年12月に策定された工程表の改定は4回目だ。プールの燃料取り出しは15年6月の前回改定でも時期を遅らせており、見直しは3回目である。

 それでいて廃炉完了目標の「30〜40年後」は今回も維持した。東電側は「廃炉作業全体の最適化を図ったことが重要」と強調するが、状況次第で「最適化」はその都度行われ、工期の遅れにつながる。肝心の汚染水対策も難航している。

 実質国有化された東電の事故対応費用は経産省試算で約22兆円だが、民間試算では最大70兆円まで膨らむ見込みだ。事故から6年半。いち早い廃炉は福島復興の象徴であり、再生への大前提であるはずだ。地元住民の不安と反発を増幅させることは許されない。
 

関連記事
あわせて読みたい