GPS捜査を巡る控訴審の判決公判があった名古屋高裁金沢支部=26日、金沢市

 福井県警が裁判所の令状を取らずに、捜査対象者の車に衛星利用測位システム(GPS)端末を無断で取り付け捜査した覚醒剤密売事件の控訴審判決が26日、名古屋高裁金沢支部であった。石川恭司裁判長は「GPS捜査は違法で、違法の程度も重大」と述べる一方で、有罪とする証拠はGPS捜査がなくても得られていたと指摘。麻薬特例法違反などの罪で懲役6年を言い渡した裁判員裁判の一審福井地裁判決を支持し、福井市の無職田端幸夫被告(51)の控訴を棄却した。

 GPS捜査に関して石川裁判長は判決で「個人の行動を継続的、網羅的に把握でき、プライバシーを侵害し得る。公権力による私的領域への侵入を伴う」とし、強制捜査に当たると指摘。令状を取らずに検察官にも知らせないまま計49日間、371回も位置検索した県警のGPS捜査は「令状主義の精神を没却する重大なもの」と批判し、令状なしのGPS捜査を適法とした一審の判断を否定した。

 その上で「覚醒剤購入者の自宅が判明した経過などにGPS捜査の結果が含まれている可能性がある」としたものの、他の尾行捜査などに基づき、捜索差し押さえ令状などの発付は可能だったと判断。「GPS捜査の影響は希薄だった。証拠能力に影響しない」と結論づけた。

 弁護側は一審から「違法なGPS捜査の結果得た証拠を裁判で採用してはならない」と主張していた。吉川健司弁護士は判決後、「GPSがなければ有罪にできなかったはずで、捜査の実態を無視している。上告するかは被告と相談して決める」と話した。

 判決によると、同被告は営利目的で2013年8月、福井市で2人に覚醒剤計0・14グラムを1万円で譲渡するなど、多数の人に密売を繰り返した。

 一審判決は昨年12月、「GPS捜査で取得した位置情報は断続的、断片的でプライバシーが制約される度合いが高かったとまでは言えない」などとし、令状が必要な強制捜査ではなく「任意捜査と解するのが相当」としていた。一方、最高裁は別の事件で今年3月、令状のないGPS使用は違法とする初判断を示した。

 県警は判決に関する取材に応じなかった。

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