健康診断で受診者の心音を聞く福田優さん=福井市の福井県予防医学協会

 福井大学長を6年間務めた福田優さん(75)=福井市=が2013年の退任後も医師として現場に戻り、健診医という新たなフィールドで挑戦を続けている。学長退任後に医療分野で現場復帰するケースは極めて珍しいが「新しいことを学び人の役に立てるのはうれしい。体が動く限り、医師を続けたい」と意欲は尽きない。

 「大きく息を吸って、吐いて。たばこは吸いますか。空気を吸うと少し雑音するね」。福井市和田2丁目の県予防医学協会の診察室。福田さんは聴診器を受診者の胸に当て、穏やかな表情で語り掛ける。

 長く従事してきた病理医の仕事に加え、学長退任後に同協会の非常勤医師として働き始めた。国立大学協会(東京)によると、学長退任後に医療分野で現場復帰するケースは全国でも珍しいという。現在、同大名誉教授で特別顧問だが、週の半分は同協会や、健診バスで出向いた県内各地のオフィス、市町などで診察している。

 健診医は、まだ自覚症状のない受診者と専門医をつなぐ橋渡し役で、早期発見と治療の鍵を握る。1日100人以上も診ることがあるため、1人の診察は約3分間。カーテンを開けた瞬間から歩き方や姿勢など“診察”が始まる。福田さんは穏やかな口調で受診者の緊張を解き、信頼関係を築いた上で、適切な診断を行う。「健診はチーム医療。周囲の優秀なスタッフがいてこそ」と感謝の言葉を繰り返す。

 医師としての原点は、小学生時代の出来事。近所の子どもが放ったゴムパチンコの石が祖母の目に当たり失明、脳出血で亡くなった。大切な人を失った悲しみが、今も原動力の一つになっている。

 健診医として総合診療の知識を深めようと、最新の専門書などを時間を見つけて読み進めているという。「新たな知識を得る時間が楽しい。そしてこれが地域医療に還元でき、人の役に立てるのならうれしい」とにこやかに話した。

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