今年4月から正社員になった藤井さん。「仕事は楽しく、少し自信がついてきた」と笑顔を見せた=7月4日、福井県越前市の木工房蔵

 若年無業者(ニート)の就労支援機関「ふくい若者サポートステーション(サポステふくい)」は昨年度から、求人企業を訪問し、利用者とのマッチングを図っている。同時に利用者と何度も面談を行い、自己PRの材料を聞き出し、徐々に自信を植え付けている。就職につなげた20代女性は「ずっとマイナス思考だったけど、前向きになると、うまくいくことがあると分かった」と話している。

  ■「頭が真っ白」■

 昨年3月に関西の短大を卒業した鯖江市の藤井夏美さん(22)は在学時、就活のため県内三つの企業の説明会に参加したが「周りの学生が自分よりしっかりしているように見えて」落ち込んだ。高校時代の模擬面接で、何も答えられなかったという苦い記憶もよみがえり、気力を失い就職を諦めた。

 卒業後は花店で5日間、ラッピングのアルバイトをしただけで、あとは自宅にこもっていた。インターネットで「サポステふくい」を見つけ訪れたのが昨年6月。その月に個別面談は4回行われたが、変わってしまった生活のリズムが合わず遅刻が続いた。サポステふくいに通いながら、生活を整えていった。

 7月にはハローワークの紹介で、県内企業の面接を受けた。答えに詰まり、頭が真っ白になった。「その後のことは覚えていない。とにかく自信がなくなった」

  ■自己肯定感低く■

 2012年の国の調査によると、15~34歳で通学していない県内の無業者は約2800人。サポステふくいへの登録者は昨年度までの11年間で1427人に上る。

 マッチングコーディネーターの大林博道さん(59)は「ここに来るのは、コミュニケーションが苦手で、自己肯定感が低い人が多い」と話す。学校でのいじめが原因の場合もあるという。

 藤井さんの個別面談は続いた。当初は漠然と「就職したい」と考えていたが、面談を重ねるうちに「ものづくりの仕事がしたい」との思いが、はっきりしていった。

 面談内容を基に、大林さんは企業を回り、藤井さんに適した仕事を探した。「具体的な業務内容、会社の考え方、職場の雰囲気などをみながらマッチングを図っていった」と振り返る。

  ■契約から正社員■

 昨年8月、藤井さんは衣料製造会社を職場見学し面接を受けた。志望動機がうまく言えず不採用になったが「前回より話せた。次もやろうと前向きになれた」。

 9月には、越前市の木工房蔵で、2週間の職場体験をした。木製品の仕上げのやすりがけでは、周りの従業員たちが親切に教えてくれた。そのうち、自分に対する呼び方が「藤井さん」から「藤井ちゃん」に変わった。同社本部長の谷川智恵さん(37)は「口数は少ないが真面目。サポステの事前説明もあり大丈夫と思った」。10月には契約社員、今年4月には正社員になった。

 いろんな工程を任されるようになった藤井さんは「仕事は楽しく、少し自信がついてきた。いつか自分の意見をはっきり言えるようになって、会社の役に立ちたい」と笑顔を見せる。

 大林さんは「社会に出たいと思いながら、誰にも相談できずに家にこもっている若者は多いと思う。今は有効求人倍率が高く、職に就ける可能性も高い。勇気を出して一度相談に来てほしい」と呼び掛けている。

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