米国の学会誌の表紙を映しながら植物ホルモンの量と分布の可視化技術について説明する塩野克宏准教授=11日、福井県永平寺町の福井県立大地域経済研究所

イメージング質量分析で可視化したイネの根における植物ホルモン「アブシジン酸」(緑)と「サイトカイニン」(赤)の分布

 福井県立大などでつくる研究チームは、最新の分析手法を用いて、イネの根にある複数の植物ホルモンの量と分布の可視化に世界で初めて成功したと11日、発表した。遺伝子の働きに影響を与える数種類の植物ホルモンを同時に判別できる技術で、あらゆる植物への応用が見込まれる。成長メカニズムの研究が飛躍的に進むほか、農作物などの効率的な品種改良にもつながり、生産性、品質の向上が期待できるという。

 生物資源学部の塩野克宏(植物生理学)、平修(分析化学)両准教授と、大阪医科大、名城大、名古屋工大、北陸先端科学技術大学院大と総合精密機器メーカーの島津製作所(京都市)の共同研究。論文は米国の化学学会誌(9月6日号)に掲載された。

 植物ホルモンは陸上の全ての植物に存在し、遺伝子の働きをコントロールする化学物質。バナナを色づかせる「エチレン」や種なしブドウを作る「ジベレリン」など約10種類がある。ホルモンの蓄積量やホルモンの組み合わせによって働きが異なるため、種類と量と分布を知れば、植物を特徴付けるパターンが分かり、品種改良などに役立つ。

 今回の研究は最新の「イメージング質量分析法」を活用。組織の切片に特殊な薬剤を塗布し、レーザーを照射して質量の分布を画像化した。薬剤の選定などを工夫することで可視化に成功した。

 イネの根で、乾燥や塩分などの環境ストレスに関わる「アブシジン酸」と、細胞分裂や着果の促進に作用する「サイトカイニン」について調べたところ、特に先端に「アブシジン酸」が分布していることが分かった。

 永平寺町の福井県立大地域経済研究所で説明会が開かれ、塩野准教授はイネをはじめ、他の果樹や園芸作物などの栽培管理、成長制御への応用が期待できると強調。「植物の研究アプローチが変わり、世界の農業を前進させる技術になる」と話した。

 理化学研究所環境資源科学研究センター(横浜市)の篠崎一雄センター長は「植物ホルモン研究の発展にとって画期的。研究者が待ち望んでいた技術開発」とコメントを寄せた。学会誌の表紙には、県立大の学生たちが論文内容をイメージして描いたデジタルアートが採用された。

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