満員の観客の歓声に応える桐生祥秀選手(中央)=9日、福井県営陸上競技場

 「すごい!」「おめでとう!」「歴史的瞬間や」-。陸上の日本学生対校選手権男子100メートル決勝で電光掲示板に「9・98」の文字が表示された瞬間、大きな喝采が福井県営陸上競技場を包んだ。手をたたいて喜ぶ人、思わず泣き出す人、驚きで叫ぶ人。日本陸上界悲願の大記録の証人となった8千人の観客は、誇らしい思いで胸をいっぱいにして桐生祥秀選手をたたえた。

 会場は、新記録への期待で朝からそわそわした雰囲気。レースを午後3時半に控え、午後2時すぎにはメインスタンドがほぼ満席になり、次々と訪れる観客から「うわ、座席いっぱいや」「どこ座る?」などの声が聞かれた。レース直前になると、座席間の階段や最後列の立ち見場所までぎっしりと観客で埋まった。

 「オン・ユア・マークス」のかけ声で水を打ったように静まりかえり、トラックに熱い視線を向ける観客。号砲が鳴ると、全員の目が圧倒的な走りを追いかけた。ゴールした瞬間、「速い」「記録が出たのでは」と期待の声が上がり、電光掲示板の表示が出ると喜びが爆発した。

 午前7時半に来場し、家族6人でゴール前最前列に陣取った鯖江市の小学4年と1年の兄弟は「びっくりした。見られてうれしい。超速くてかっこよかった、あんなふうに走ってみたい」と声を弾ませ、福井市の小学5年の女子児童は「私の50メートル走の記録と同じくらいのタイム」と目を丸くした。福井市の会社員笠原めぐみさん(39)は3歳の長男にレースを見せたいと来場。「歴史的瞬間に立ち会えて、われを忘れて叫んでしまった」と笑顔を見せた。

 大会の補助員を務めた高校生にも、大きな刺激になった様子。武生東高1年の多田隼斗さんは「結果を見て手が震えた。あんなふうに走れたら最高だと思う。練習を頑張りたい」と意気込み、走り高跳び県記録保持者の蓑輪夢未さん(北陸高1年)は「みんなに注目される中で記録を出した。私もプレッシャーをはねのけられるようになりたい」と目を輝かせた。

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