【論説】トランプ大統領が登場して以来、米国は自由と平等の国ではなくなった。寛容の精神を失った排外主義が加速し、強まる白人至上主義を擁護するような発言を口にするトランプ氏。さらには不法移民の子供たちの強制送還を猶予する措置まで打ち切ると宣告。国内各地で抗議デモが広がり、全米15の州などの司法長官が憲法違反として一斉に提訴した。「病める大国」に国際社会はどう向き合うのか。同盟国日本の立ち位置も厳しく問われよう。

 なぜ、トランプ氏はここまで強硬路線を歩むのか。

 命題は大統領選で訴え続けた「米国を再び偉大にする」ことである。拡大するグローバル経済は自動車など米国の主要産業を衰退させた。トランプ氏はその責任を既存の政治勢力に向け米国第一主義を標榜(ひょうぼう)。職を奪われた白人たち下層中産階級の復権に狙いを定め、支持を勝ち取ったのだ。

 白人至上主義者と人種差別反対派との衝突で、双方同等に批判したことで「差別を容認している」との批判が渦巻いた。それも承知の上だったのだろう。大統領選勝利の原動力となった「忘れられた白人」の保守的な心情に寄り沿った。

 移民政策でも、移民への権利付与を制限し、国外退去にすることで雇用と伝統を守るべきだとの主張が根強い。しかし、米国は移民の国である。人種や異なる思想を超えた寛容と自由なエネルギーが大国を創造したのではなかったか。

 トランプ氏の差別的な対応には与党共和党や政権内からも反発の声が続出。大統領政策助言組織からの企業トップの辞任も相次ぐ。肝心の政策スタッフもいまだ固まらない状況だ。

 政権の排外主義的な政策を主導した保守強硬派の最側近バノン首席戦略官兼上級顧問を解任したが、大統領自身の過激な言動は変わらず、支持率は30%台半ばまで下降している。人種や移民問題で社会の分断を引き起こしてでも、強固な支持層の引き留めを図る政権に何が期待できるのか。

 米国内では、勢いを増す白人優越思想の中で「人種差別は表現の自由だ」とのゆがんだ論理が醸成されつつある。それに対抗する「アンティファ」と呼ばれる反ファシスト集団が一段と過激化し、「暴力の連鎖」が止まらない。

 混迷の米国でまともな政治は期待できそうもない。トランプ政権は選挙公約の目玉である医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案の成立に失敗。大型インフラ整備や減税などの公約も議会側との調整が困難で、対外的な通商政策も先行き不透明だ。核・ミサイルの脅威が増す北朝鮮に対しては、言葉で激しく威嚇するものの、平和的解決のめどは全く立たない。内憂外患の政権運営である。

 せめてもの救いはティラーソン国務長官やマティス国防長官らが比較的安定した外交・安全保障政策の遂行に努めていることだ。日本が果たすべき役割は穏健派と連携を強化し、経済政策を含めて大統領の暴走を抑止することではないか。
 

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