【論説】「こんな田舎、どうしようもない。地元の人がそう思っている地域には移住者は来ない」

 島根県の中山間地域を拠点に「田園回帰1%戦略」を推進し全国に波動を広げている藤山浩さん(持続可能な地域社会総合研究所長)はこう訴えてきた。

 ならば、こうも言える。「こんな田舎、どうしようもないと思ったら、若者は出て行く」

 過疎と少子高齢化が加速する中で、いかに覚悟を持って住民自らが地域を磨いていくかだ。

 ■移住戦略もいいが■

 政府は世界最速で進む人口減少を止められないままだ。国立社会保障・人口問題研究所の最新データによると、このまま進めば2008年の1億2808万人をピークに、53年には1億人を切り、100年後の2115年に5056万人、200年後は1380万人、西暦3000年にはついに2千人になるとの推計がある。2000年に82万8944人でピークを打った福井県は、現在78万人を割り減少の一途をたどる。

 「地方創生」の掛け声とともに、人口減に直面する自治体は支援策を競い、人の争奪戦が白熱する。移住戦略は地域維持の「特効薬」として成果も出ている。だが、大切なのはパイの奪い合いではなく、いかに住民が地域力を高めていくかだ。

 「田園回帰1%戦略」も狙いはそこにある。培ってきた伝統と風土に根差したソフトな取り組みが不可欠な時代である。人口減を恐れ、未来を悲観しては今を生きられない。

 ■主役は住民自身だ■ 

 地域が抱える課題を自らの手で解決し、住み良い地域社会の創造を―。こんな目標を掲げ成果を上げている団体の活動を顕彰するのがあすの福井県を創る協会による「元気なふるさとづくり活動賞」だ。10回目を迎えた本年度は前年を大幅に上回る12団体から応募があった。

 最優秀賞の「小原ECOプロジェクト」(勝山市)は、超限界集落における限界を超えた活動を続ける。明治中期には93戸、535人が居住していた山村の小原集落。現在は高齢者1人のみ。11年前、市内などに住む森林所有者らが立ち上がり、古民家再生も含め15棟の家屋を生かしながら、エコツーリズムや農家民宿、自然保護活動などを展開、都市や海外からの来訪者と交流を深めている。

 年間1200人を目標に交流人口増で地域維持を図る試みは貴重な社会実験だ。「たとえ人がいなくても地域は成り立つ。残すことが社会的役割」との志は、交流が進んで「第二の住民」につながるかもしれない。

 ■高まるふるさと愛■

 優秀賞の「NPO法人 農と地域のふれあいネットワーク」(福井市)は、専門知識を持つ約40人の会員らがナシやウメ、田んぼのオーナー体験事業、さらに「ふるさと学級」や「ふるさとワークステイ」などを多彩に展開する。まさに地域づくりの原点は「農にあり」を示す。

 同じく優秀賞の「福井県生活学校連絡協議会」(福井市)は半世紀の活動を踏まえ、食の安全やごみ減量化の取り組みを発展させ、アルミ付き容器包装から水素を取り出す事業普及を目指す。こうした循環型社会への視点は一層重要になる。

 他の団体にも共通するのは「ふるさと愛」である。今後は若者の自由でグローバルな発想と実年の行動力、女性のしなやかな考え方、経験豊かな高齢者には生涯現役として活躍できる場づくりが必要だ。未知の変化に柔軟に対応していきたい。

 国は今、地域住民自らが生活サービスの提供やコミュニティビジネスの事業主体となりうる地域運営組織づくりを推進している。地域の底力は濃厚なコミュニケーション力と共助の精神があってこそ発揮できる。「地域を守る」から「地域を創り未来を切り開く」気構えを実践に移す時である。

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