湧水地で水温などを計測する筑波大の学生ら=16日、福井県大野市の本願清水

 名水のまち、福井県大野市が水の研究フィールドとして全国の研究機関から注目を集めている。同市は水が山や川などから地中に染み込み、川に合流するまでの一連の流れが見える特徴があり、研究者らは「水循環が活発で科学的な面白さがある」と話す。15日からは研究5年目を迎える筑波大の学生らが調査に取り組んでいる。

 市内は山に囲まれた扇状地。地下水で満たされている地層と水を通しにくい粘土質の地層が重なり、まち全体が水がめのような構造になっている。地下水量は推定で平均9800万立方メートルあり、東京ドーム約80杯分。市内の約8割の世帯がポンプで水をくみ上げ、生活用水に利用している。

 国土交通省と筑波大は2013年から研究を開始。14年以降は総合地球環境学研究所(京都府)や同志社大、香川大、早稲田大も調査に入った。今年は関西大も加わる予定だ。地震前後の水位変動を調べたり、原子の質量から水の流れの速さを推測したりと、それぞれの専門分野から大野の水を調べている。

 筑波大は水が地中に入った場所や通るルート、速さなどをまとめた水の“履歴書”をつくり、保全活動につなげようと研究している。16日は学生ら約30人が本願清水など湧水地や川を巡り、水温や電気伝導度を計測した。

 「大野は地下水として蓄えられる過程など一連の流れが市内で完結する。科学的に面白い」と同大の辻村真貴教授。山や川、田んぼから地面に染み込んだ水は1日約30メートルの速さで北に進むとみられ、勝山市境で川に合流するという。

 辻村教授は、市が取り組む保全、活用事業も先進的とし「水に付加価値を付けるのは難しいが、海外の水環境を整備するなど新たな手法で水の大切さを伝えている。学ぶことが多い」とうなずく。「今後も学術的なデータを活用して、水を守る施策につなげてもらえたら」と期待を寄せた。

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