【論説】南米原産の強毒アリ「ヒアリ」が今年5月以降、国内各地で見つかっている。今月9日には岡山県でも発見された。腹部の先にある針で刺されると、重いアレルギー反応を起こす人もいるという。定着してしまうと人はむろん農業や家畜、通信設備への被害などさまざまな影響が予想される。

 海外からのコンテナ船や貨物にまぎれこんで上陸したとみられるが、今のところ国内で定着したという報告例はない。県内では敦賀港で調査が行われ、ヒアリは確認されていない。ただ、港湾だけでなく、コンテナが運び込まれた内陸部でもヒアリが見つかり、油断できない状況だ。定着を阻止するためにも、県民も関心を持つ必要がある。

 ヒアリは1930年代に米国に入り込んで東南地域に定着。80年代には西海岸にも広がった。船のバランスを維持するバラストと呼ばれる土や砂利のほか、荷物などとともに広がったとされる。21世紀に入りオーストラリアや台湾、中国にも侵入し繁殖。いずれも米国からとみられる遺伝子解析結果が出ている。こうして見ると日本の主な貿易相手国であり、侵入は時間の問題だったともいえる。

 ヒアリは赤茶色で体長2・5〜6ミリで、土で作るアリ塚(巣)は、高さ15〜50センチ、直径25〜60センチのドーム状だという。環境省は2005年に「特定外来生物」に指定し警戒してきた。東北地方南部以南は気温や降水量などの面で生息に適した環境とされる。公園や農地、道路脇など日当たりの良い場所に巣を作る可能性が高いという。

 米国ではジャガイモ、かんきつ類などの農作物、電気設備や電化製品にも被害が相次いでおり、駆除や被害の修復などを含め経済的損失は年間約6千億円に上るとの試算もある。南部の各州ではアナフィラキシー(急性アレルギー)ショックによる死者は50〜100人との推計もあるという。

 ヒアリに刺されると激しい痛みが伴い、息苦しさや動悸(どうき)、めまいといった症状が出た際には、すぐに病院に行く必要がある。巣を発見した場合は自分で駆除せず、県や市町、環境省の地方事務所に連絡してほしい。在来種のアリがヒアリの繁殖を妨害する可能性も指摘されている。むやみに殺虫剤を使って在来種まで駆除しないようにしたい。

 人や物がグローバルに行き来する現代では、ヒアリのような有害な生物が入り込む可能性が大いに高まっている。貿易はとどまることなく日々、続いているため、普段の水際対策の徹底が必要だ。日本に輸出する前の段階での防除に向け、貿易先の国々との連携も模索してほしい。

 さらには、地球温暖化により、アジアの他の国々やアフリカ、欧州などに拡大する恐れもある。効果的な対策の研究など国際社会と一丸となった取り組みが欠かせない。

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