【論説】政府は、小中学校の夏休みを一部短縮した分、地域ごとに春や夏の時期に分散し、前後の土日をつなげた大型連休「キッズウイーク」を来年度に創設する意向を打ち出した。子どもに合わせて親が休暇を取り、親子が一緒に過ごす時間を確保しやすくするという。

 しかし、いかにも唐突な提案である。制度導入には学校現場だけでなく、企業はもちろん地域全体の対応が迫られる。しかも1年後の来春スタートとなると時間的な猶予もない。全国から届く戸惑いや疑問の声が日増しに大きくなっている。

 ■休み方改革の名の下■

 「キッズウイーク」構想は5月下旬、安倍晋三首相の私的諮問機関・教育再生実行会議が家庭、地域の教育力向上の方策として公表した。狙いは「親子で向き合う時間を増やし、子どもの豊かな心や人間性を育む」ことだという。

 これを受け6月初め、経済財政運営の指針「骨太の方針」が閣議決定され、早速「『キッズウイーク』を設定し、学校休業日の分散化、有給休暇取得の促進などを官民挙げて推進する」ことが盛り込まれた。

 教育的観点から労働問題まで範囲が広まり、安倍政権の「働き方改革」に続く第2弾「休み方改革」の位置づけがより鮮明になった。裏付けるように骨太の方針では「観光・旅行消費の活性化」の項目に組み入れられた。経済政策の色合いが極めて濃厚と言わざるを得ない。

 ■自治体など寝耳に水■

 モデルはフランスやドイツの政策である。バカンスによる交通渋滞・混雑を緩和するため休日を分散している。フランスでは全国土を3区分し冬・春休みを1週間ずつずらしている。親も一緒に休むことで旅行の需要が生まれ、さらに安定的な観光収入も見込めるからだ。

 政府は東京五輪の2020年ごろに、名目国内総生産(GDP)600兆円達成を目指している。そのためには16年度の537兆円を10%以上増やす必要がある。家族旅行を起爆剤に経済活性化を図るもくろみだ。

 ただ、自治体や学校、企業からすればまさに「寝耳に水」の提案。政府は「教育現場に混乱が生じないよう対応を検討する」と一応の配慮を見せている。しかし行政側が一刀両断に決めるわけにいかず、学校では広範に及ぶ対応をゼロから話し合う必要がある。さらに地域内の調整や合意も欠かせない。

 福井県は現在「情報収集に努めている」段階で、事の成り行きを見守っているというのが正直なところだ。

 ■休めない親も数多い■

 学校現場はもとより、経済界の協力も簡単ではない。確かに日本の有給休暇取得率は50%に満たず、欧米と大きな開きがある。政府目標の70%は「働き方改革」を推進する強力な後押しとなるだろう。

 とはいえ経済界の協力が得られても、個々のケースでは、サービス業で休みにくい、非正規雇用で有休が少ない、人手不足で自分だけ休めない、休みより生活費確保が優先…など働く親の厳しい現実も控えている。

 教育再生に端を発した「キッズウイーク」構想が、なぜかしら観光推進、消費喚起策にすり替わった。どう考えてみても、教育や子どもをダシに使った景気浮揚は本末転倒であり、国民の理解を得るのは難しい。さらに学校をはじめ企業や地域全体の協力がなければ「絵に描いた餅」に終わりかねない。

 「アベノミクス」の一翼を担う成長戦略に熱心だという「印象操作」に多少の効果はあるだろうが、越えるべきハードルは高く、しかも幾つもあると言わざるを得ない。

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