【越山若水】大正から昭和に活躍した内田百けん(ひゃっけん)は少し変わった作家である。大食いで浪費家、さらに借金地獄に苦しみながら、それをユーモラスな作品に仕上げ人気を集めた▼彼の随筆に「油揚」という作品がある。子どものころ小さな家に住んでいる友達がいた。ある日遊びに行くとご飯を食べているところ。しばし外で待っていた▼すると何とも言えぬうまそうな匂いがしてきた。その子も母親に「これが一番うまい」と話している。何かと思いお膳をのぞくと、油揚げの焼いたのを食っていた▼家に帰って自分も油揚げを焼いてもらって食べた。その味を「じゆん、じゆん、じゆんと焼けて、まだ煙の出ているのを皿に移して、すぐに醤油(しょうゆ)をかけると、ばりばりと跳ねる」と内田は書いている▼いかにもおいしそうな文章で、煮物とは違うカリカリの食感、そして香ばしさが脳裏に浮かぶ。その後も、友人が訪ねて来ると油揚げを焼いて提供し酒杯を交わしたという▼随筆では貧しい家庭の簡単料理として、焼いた油揚げを描いている。しかしわが福井県で油揚げと言えば、報恩講に欠かせないおなじみの食材である▼福井市は総務省家計調査で油揚げの購入額が54年連続日本一に輝く。脂質は多いが、タンパク質など大豆の栄養素はそのままの健康食。お盆で帰省中の皆さん、内田百けんご推奨の「油揚げの焼いたの」はいかが。

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